春の嵐
普段理性の強い人間がアルコールを過剰摂取すると普段我慢している諸々がだだ漏れになってしまうものだということを再認識してから、普段本能のまま生きてる臨也もうどうとでもなれと思った。据え膳なんちゃらである。こんなのもう二度と訪れないかもしれない。ごくんと生唾を飲み込んで、だけど傍目からはそんな焦った姿にみられないように、平静を装いながら静雄に話しかける。
「ちゅうしたいんだ?」
あくまでしてきたのは静雄だというかたちをつくるために、敢えてそう問えば静雄はこっくんと首をたてにふる。
「ちゅうしたい」
なんてめしうまな状況だろう。臨也は心の中でガッツポーズする。いいよ、とぎりぎりまで自分のくちを静雄のくちの前までもっていく。息がかかる。お酒のにおいがする。臨也はフェロモンでくらくらすることもあるものだなとへんなところを知る。右手を静雄の後頭部にもっていく。すこし傷んでいる髪の毛の感触がきもちよい。
ふにっと静雄のそれが触れて、臨也はたまらなくなる。舌入れたら怒るかなあ。
新羅はもしセルティに首があったら迷わず彼女の目を覆っていただろうと気持ちわるい臨也の背中をこっそりみながらため息をつく。ちなみにセルティもがっつりみている。だけどセルティはそんなに退いてはいなかった。驚きこそしたものの、むしろ興味に湧いていた。しかしキスとはどんなかんじなんだろうと。
思わず深くなったキスに、静雄が苦しそうにうめく。その隙に臨也はちゃっかり舌をいれて静雄のぬるい口内を舐め上げていった。あぁもうシズちゃんのくち無駄にあまい・・・もう夢中である。歯列をなぞって、はふはふ言ってる静雄の後頭部をがっつり固定して舌唇も噛んでおく。若干とろんとしてきたところで、臨也の背中にまわっていた静雄の手に力がこもった。あ、きもちいのかな、と思ったのだけど、その次の瞬間臨也はぶっとばされていた。きもちいのではなかった。単にわれにかえっただけである。
「てめ、てめぇイザヤァァァァ!!!」
ごしごし擦り切れるくらい自分の口を拭きながら涙目で静雄は仁王立ちした。臨也は覗き見していた新羅たちの部屋までぶっとんで2人の間を割いていた。いい迷惑である。
「っ、誘ってきたのは悪いけどシズちゃんなんだからね」
「なっ、んなわけあるかぁっ!」