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春の嵐

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しかしこれだけこの男が酔うだなんてどうしたことだろう。色々無作為に、主に自分の所為で敵も多い人間なので本当に珍しい。よほど疲れていたのか、いやなことがあったのか、だとしたら弟絡みだろうなあと臨也は考えてむっとする。いくら身内でもシズちゃんがべつのひとのことでこんなになるのはいやだなあ。
臨也はあてていた右手を、今度は静雄の頬にもってくる。サングラスをかけていない静雄の寝顔はなんだか幼くて高校時代を思い出す。あのころからぼくたちは、なにも進化しないなあ。
ふと静雄のまぶたがひくつく。

「シズちゃん?起きた?」

寝起き一番で殴られたら厄介なのでそれとなく避ける態勢と心構えだけはもって臨也は声をかける。しかし次に静雄がとった行動により臨也は頭が破裂しそうになる。
んん、と喉をならした静雄はのっそり起き上って、そばで膝をついて座っていた臨也に寝ぼけ眼で抱きついたのである。

「し、しずちゃん?」
「ん」

ちょ、まってまってまってシズちゃんが抱きつくなんて俺にだきつくなんてどういうことだなんの策略だうわあシズちゃんお酒くさいけどすごいいいにおいするなにこれフェロモン?
臨也はうっかり正常な思考を見失ってしまった。静雄は臨也の首のあたりにうめていた顔をあげて、とろんとした目で臨也を見上げる。臨也はどっきんどっきんした。シズちゃんが静かに自分を見つめている・・・これだけで生唾がでてきた。

「シズちゃん、寝ぼけてるのかな、まだ酔ってるの?」
「んん・・・」
「ちょ、ねえこれ以上この態勢だとおれちょっとやばいんだけどさぁ」

理性とかなんかいろんなものが。この状況は彼にとってもう大歓迎いただきますな状況であるけれどうっかりそれに流されたら自分にとって最悪な状況ができあがることがわかっていたからだ。だけど寝ぼけた静雄はこんな葛藤もいざ知らずとんでもないことを口にしだした。

「・・・ちゅうしていいか?」

しかも首をかしげるオプションつきで。



あっやべ今頭パーンってなった。臨也はくらっとした頭をどうにかもちなおして、今妙なことを口走った図体のでかい男の顔をまじまじとみた。え?いまシズちゃんちゅうっていった?
作品名:春の嵐 作家名:萩子