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ぶりたにあ・えんじぇう☆★

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1.事の始まり





 ふと、知った気配を感じ取った気がして、黒バイクを走らせていたライダースーツの女、池袋の都市伝説ことセルティ・ストゥルルソンはバイクを減速させると、人目に付かない場所で静かに路駐した。
改めて探ってみた所、やはり気のせいではないらしく、同様の気配を一定の方向から感じる。首を傾げ(とは言え、彼女には首が無い為、愛用のヘルメットを横に傾ける行為である)、腕を組んでセルティは考えた。
(一体、何故……)
彼女が思案するのは、それが普段、ここに居る筈が無い者であるからだ。と、言うより、そもそもこの国に居る事自体がほぼ0であってもおかしくはない(しかしながら絶対では無い為、可能性は残しておく)。
間違いであったのかと思うが、一度気になってしまった事を確かめずにはいられず、セルティは愛機であるコシュタ・バワーに跨ると、走らせていた方向とは逆に向かってエンジンを吹かせた。



 向かった先は、こじんまりとした公園だった。
長閑な午後の昼下がり。おやつ時を過ぎた公園に、子供はおろか、親子連れすら見当たらない。
そうした中、セルティの視界に映っているのは、彼これ数十年前に見た時より、全く以て見た目の変わらない男の姿であった。
男は、足を止めて佇むセルティに気付くと、大きく目を見開く。

『ストゥルルソン!?』

流暢なクイーンズイングリッシュが口から滑り落ちた。普段は日本語で会話する事が殆どであるセルティも、元はアイルランドの生まれである。
その言語には最早懐かしい、と言う感慨しか浮かばないが、セルティにとって日本語で会話する事も英語で会話する事も大差ない。
加えて、更に言うならば、この男との会話は、余計な手間が掛から無い。

『久しいな、カークランド。相変わらずのようだな。』

『おう、そっちも変わんねぇみたいだな。と、言うか、暫く見掛けないと思ったら、何時の間に日本に来てたんだよ。』

『止むに止まれぬ事情、と言う奴だ。』

音も無く近寄るセルティに、男が逃げる事は無い。親しげな表情を浮かべて、歓迎している。そのセルティの両手には、何も持たれていない。

『そうかよ。本国の皆は心配してたぜ。帰ってやらないのか。』

『生憎だが、私はこの国で骨を埋めると決めたんだ。それに、私には以前の記憶も無いし、皆と会っても、思い出せないのでは悪いしな。』

心の内で苦笑すると、男は怪訝そうな顔をした。セルティの意思は通じているであろうから、言葉無しにその経緯を問うているのだろうが、説明も面倒なセルティは肩を竦めるのみに留めると、『それよりも。』、と、眼前の男に心で語り掛ける。

『お前はこんな所で何をしている。"イギリス"本体であるお前が、何故日本に…と、言うより、お前、その……』

セルティは、久々の邂逅よりずっと気になっていたものへと、視線を移した。
男の右手に繋がっている、ソレ。くるりと瞬いた、薄青掛かる黒の双眸が興味津津に妖精を見上げている。
言うべきか、言わざるべきか。迷って、セルティはおずおずと、切り出した。

『国家の体現たるお前が、誘拐は感心しないぞ。』

『違ぇ!!』

元の場所に返して来いと、やんわりと窘めようとしたセルティに対し、男は憤然と抗議しに掛かる。言われも無い濡れ衣だと肩を怒らせる男だが、次第にその肩は落ち、気不味そうに視線を隣に居る幼子から外した。
その、今までセルティをじっと見詰めていた、黒い髪が艶やかな少年は、舌足らずな言葉で、男に問い掛ける。

「あーしゃーしゃま。こちらのおねえさんは、おしりあいですか?」

少年は、男の事を知っているようだ。つまり、一応何所ぞから連れて来たのではないのだと安心したのも束の間、男が発した言葉に、セルティは凍りついた。

「あっ、あぁ、竜ヶ峰。此方は、セルティ・ストゥルルソンって言って、俺の古くからの友達だ。」

竜ヶ峰。
確かに、男はそう発音した。
全く無いとは言わないが、少なくとも珍しいに違いないその名字を持つ人物を、セルティは知っていた。
そして、改めて少年を見る。と、何所となく、セルティの知っている彼に、似ている気がしてくる。似ていると言うか、彼を小さくしたらそのままではないだろうか。
あまりに有り得ない事実に、これは妄想か白昼夢だと思おうとして、そう言えばこの男はあの不思議国家である事を思い出したセルティは、恐る恐る、男に目を向ける。

『なっ、なぁ。その……その少年の事なんだが………』

『は?知ってるのか、お前。』

驚いたように瞠目する男とは対照的に、人好きのする愛らしい笑みを浮かべた少年は、セルティに向かって小さく頭を下げる。

「はじめまして!せるてぃさん。ぼくのなまえは竜ヶ峰帝人です。」

5つです!、と、片手を突き出してセルティに年齢を教える少年が、本当にセルティの知る彼、竜ヶ峰帝人なのだと確信し、目の前が暗くなった。