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ぶりたにあ・えんじぇう☆★

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 男、アーサー=カークランド、正式には"グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国"は、事の経緯を語った。
そもそも、イギリスである彼がこの国に居るのは、先日まで行っていた国際会議の議長国が日本であった為であるらしい。
1週間程滞在して、明日、帰国する予定だったのだと言う。

『それで、どうしてこうなった。』

げんなりと幼い帝人を膝に乗せて緩く抱き締めたまま疲れた様に聞く。帝人のお守をセルティに任せたイギリスは、セルティよりも余程疲れた具合に、肩を落として言葉を続けた。

『会議自体は一昨日で終わってな。昨日はまぁ、飲み会って奴だ。国際交流を踏まえた親睦会。っても、何時もつるんでる面子だったから割合と気心の知れた顔ぶれではあったと思うが。』

『と、言うか、そもそも、何故お前が帝人を連れていて、更に帝人はお前を知っている。』

本来はイギリスに居る筈の男と、日本国籍の少年、帝人が、どうやったら接点を持つというのか、セルティには疑問でならない。
あぁ、とセルティの言葉を受け、チラリと帝人を見遣りその頭を撫でると、撫でたままイギリスはセルティを見た。ちなみに帝人は嬉しそうである。

『竜ヶ峰の家が旧家であって、更に歴史の古い家柄だって事は、知ってたか?』

『…多分、初耳、だが。それがどうした?』

『竜ヶ峰の詳しい歴史は俺も知らない。だが、竜ヶ峰家と、本田…俺と同様の存在である、この国の化身、日本が、昔から交流があるらしい。』

その縁で、イギリスは帝人の事を知っていたし、会った事もあると言った。

『元々、竜ヶ峰の家は本田家当主が日本である事を知っていて、代々口伝で受け継がれてきているそうだ。それで、そいつ、竜ヶ峰帝人も、勿論本田と面識があり、更に竜ヶ峰は頻繁に本田の家に出入りしていた事もあって、偶々本田家を訪れていた俺や他の国の面々とも顔を合わせる事になった、って事だ。』

奇跡的に未だ残っている自動販売機で購入して来た温かい紅茶のペットボトルに口を付けるイギリスの太い眉は、しっかりくっきりと皺を刻んでいる。
相も変わらず紅茶の味に煩い男だな、と、こうした所にも変わらない点を見付けて思わず心の中で溜息を吐いた。

『なるほどな。それで幼い姿の帝人がお前の事を知っていた、と言うのは理解出来た。が、だからどうして、帝人は小さくなっている。』

本題に切り込んだ途端、イギリスが息を詰まらせたのが分かった。
重く蟠る鉛を吐き出す様に、大きく深呼吸をしたイギリスは、青々と広がる空に目を遣り、遠い目をした。

『言ったろ、昨日は飲み会だった。で、場所が新宿だったんだ。そんでな、会議の休憩中の雑談の中で、偶々、竜ヶ峰の話になって。本田が、そいつが池袋に今1人暮らししてるっつーから。じゃあ、食費を浮かせてやるか、って事になって、呼んだ訳だ。』

国家の群衆の中に年端もいかぬ、とはいかないまでも、成人もしていない若い少年が放り込まれた現場をリアルに想像して、セルティは思わずイギリスを睨みつけた。

『あぁ、うん、お前の言いたい事も分かるけどな。…悪ふざけも多少はあっただろうが、呼んだ事自体は本当に純粋な好意だった。ドイツやイタリアだって歓迎したし、フランスの野郎も特に何も言わなかったし。アメリカなんかは楽しそうにゲーム談義してたしな。ただ……』

『―――ただ、そうだな。お前が酔った勢いとテンションで勝手に変身して、魔法使って、暴発したのが帝人に当たったとか言うオチだろう。殴って良いか?』

言い難そうに言葉を濁すイギリスの言を継ぎ、きっぱりとセルティは言った。握り締めた拳に力を込める。
あたふたと慌てるイギリスはベンチから飛び退き、セルティから距離を取った。

『わっ、悪かったって!分かってるよ、俺が悪い!!でっ、でも、アメリカだって悪いんだからな!おっ、俺の事嫌いとかウザいとか言うから…おっ、俺だってお前の事なんか嫌いだ馬鹿ぁ!!!』

ツンデレ、メンドクサイ。
思わず言葉が片言になってしまう程鬱陶しい男は、まさか昨夜の酒でも残ってるのではあるまいなと思う程取り乱し、終いには目に涙を浮かべ始めたので、これ以上放っておくと話が進まなくなると、セルティはゆるゆると首を頭を振って気を落ち着かせた。

『で、肝心の帝人は何時元に戻るんだ?』

既に若干手遅れの様で、ベソベソと白磁の頬を朱に染めて泣き濡れている白人男性を生温い眼差しで以て見遣り、帝人を抱き上げてイギリスに向き合わせた。
鼻を啜るイギリスは、黙っていれば彫刻めいた美貌を性根と性格で台無しにし、すっくと立ち上がると再びベンチに腰を下ろした。

『正直な所……普通の人間相手に当たった事が無いから、断言は出来ない。だが、同じ国家に当てた時は、大体1週間程度で元に戻った。』

冷め掛けている紅茶を一気に呷ると、近くにあった金属製のごみ箱に投げ入れる。
カコン、と良い音がして、大きな穴の中に吸い込まれていった。

『1週間……で、戻ると良いな。取り敢えず様子見、か。』

『あぁ。俺のその魔法は、掛けたら解く事が出来ない。一定の期間が過ぎない限りはな。万が一その期間で戻らなかったら、連絡くれ。』

イギリスが指差す箇所をセルティが探ると、帝人のショルダーバッグの中に、帝人が使っている携帯電話が入っていた。
見れば、イギリスのプライベートナンバーとアドレスが登録されている。

『兎に角、今回の事は俺の責任だ。だけど、俺も何時までも此処に居られる訳じゃない。国家としてやらなきゃなんねぇ事あるし。』

そうして、チラリと時計を見たのと同時に、公園の入り口に高級外車が止まった。
中から、屈強そうな身体つきの厳つい男達が下りて此方へ向かってくる。

『だから、悪ぃんだけど……』

済まなさそうに目を向ける男に、セルティは苦笑する。情けない表情をして、それで国家の威厳が保たれる訳がないではないか。
軽く背を叩き、セルティは自分達の居場所を作り、生かし、守ってくれた男を見送る。

『仕方が無いから、お前の尻拭い、任されてやろう。帝人は私の、大切な友人だしな。』

任せろと、手を振ると、イギリスは太い眉をハの字に曲げ、頼んだと、古巣の友人に向かって手を上げた。
遠ざかる背を見ながら、困った友人だと、セルティは苦笑いした。





『ところで、お前、普通の人間との会話はどうしてんだよ?』

『普段はPDAを使って会話してる。別にもう慣れたけど、最初の頃は不便だったかなぁ。でも、向こうに居た頃の話相手って、専らお前等じゃないか。だったら、言葉にしなくても通じる少数の相手より、多少四苦八苦しても多くの人と感情を分け合える現状の方が、私はずっと良い。』

『……そうか。お前が幸せなら、俺は何も言わねぇよ。』