輪廻夫婦
「うむ。その、いつも何かと良くやってくれている、労いとでも言おうか。まぁ、正当な報酬だ。受け取れ」
顔を背けて早口で告げるガーランドがどんな表情をしているのかは、兜でわからない。だが、長い時彼を見ているウォーリア・オブ・ライトには、仮面の下で照れくさそうにしている素顔が見える気がした。
クッと両頬を僅かに持ち上げた彼は、兜に手をかける。久しぶりの外気に頭を二三振ると、身につけている割烹着を脱いだ。
「ガーランドよ、感謝するぞ」
「勘違いするでない。貴様を喜ばそうと思ったわけではないわ。これは正当なる報酬だ」
だとしてもだ。そこから先は声に出さずに胸中に留めた。
話している間に動かしていたウォーリア・オブ・ライトの手が止まった。新たに身につけているのは、先ほどガーランドから贈られたばかりのまっさらな割烹着だ。下ろしたてにふさわしく、汚れは一つもなく、糊が利いている。
傍らに置いてあった兜を再びかぶって立ち上がる。
「どうだ」
「悪くはあるまい」
「ならば良しとしよう」
ガーランドにお墨付きを貰った彼はそのまま台所へと戻る。ガーランドの言う悪くないは概して大変好ましいの意だ。しかし、仮にも服を贈ったガーランドとしてはマジマジと見る時間もなくすぐに席を立ってしまったウォーリア・オブ・ライトに不満がつのる。少しばかり観覧させてくれても良い物を。
しかしガーランドの心の声が聞こえたわけではないだろうが、ウォーリア・オブ・ライトはすぐに引き返してきた。手に持った皿には煎餅が盛られている。
「茶だけでは口寂しかろう」
「……ふん、余計な真似をしおって」
「おい、今日はブリ大根が食べたい」
「なんだと。どちらも家にはないぞ」
「いいではないか買い出しくらい、儂もつき合おうではないか」
「……ならば良かろう」