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【ヘタリア】 兄さんが消えない理由 ドイツ騎士団篇

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『兄さんが消えない理由』1 ドイツ騎士団篇






 壁が崩れて、再会した兄は、痩せてはいたが健康そうに見えた。
だが、その体の中で起きていた変化に、俺は気付くことが出来なかった・・・・・。

兄が倒れたその日まで・・・・・・・。



その日のうちに、ベルリン市内の病院に運び込み、ありとあらゆる検査をした。
たが、兄の体には呼吸器系のわずかな異常が見られただけで、意識を失った原因は見つからなかった。


そう・・・わかっている・・・・・・。
原因は「俺」だと。
そんなことは、もう・・・・・俺が生まれた時から・・・・・・
・・・・・・・・・・わかっていることなのだ・・・・・・。

ああ・・・・・兄さん・・・・・・。





*******************************


「いい設備してるよな。なんでもあるし・・・・この病院・・・・・。」

「兄さん・・・・もう食べないのか?」

明るく陽が差し込む病室で、ギルベルトがポツリと言った。
忙しい仕事の合間をぬって見舞いに来たルートヴィッヒは兄の食欲のなさが心配だった。

「んー・・・・。なんかこれ以上、入んねーんだよ。そのうち、食いたくなったら食うから、そんな顔すんなって!」

ギルベルトは、もうずっと心配顔のルートヴィッヒに苦笑する。
弟は心配しすぎなのだ。
ギルベルト自身はどうして倒れたのかはわかっている。
以前、ドイツ帝国となった弟に、自らのすべてを渡した時と同じ感覚だ。
慣れるまで時間がかかるだけで、そのうち、このだるさは消える。

 (ヴェストの恐れはわかっている。「俺が消えるのではないか。」だろう。
 悪いが、そんなやわな体はしてねえらしい。
 どうして、俺が消えないのかは、俺にもわからねえんだがよ。)

ギルベルトは、あれこれと心配して世話を焼く弟を見ると、心の底から、幸せを感じる。
東西に分かれていた時は、こんな思いを忘れていた。
「帰れたのだ」、と実感する。


ベルリン一だという病院にかつぎこまれてきてからというもの、やれ、検査だの、やれ最新鋭の機械だので、こねくりまわされ、見舞いだと言っては押し寄せてくる客で、自宅にいる時よりもずっとめまぐるしかった。

東ドイツのほうの問題は、統一して一年もたたない今、まだルートヴィッヒにまかせるのは早すぎたから、ギルベルトが担当している。
その仕事が、病院にいるとほとんどまわってこないのだ。
それと同時に、弟の見舞いが減って、眉間にしわを寄せている数が増えた。

あきらかに、ルートヴィッヒが、ギルベルト=東ドイツの仕事をこなしているのだとわかる。
弟に、感謝はしたいがあきれてしまう。

 (相変わらず、くそ真面目で融通がきかない奴だ。

俺が倒れたのなら、俺の仕事なんて、ほっときゃいいだろうに・・・。)

東西の格差はきびしく、それをなんとかルートヴィッヒがは解消しようと奮闘している。


そして、2日ぶりに現れた、わが弟・・・・・・・・。

目の下にはくまができ、いつもはかっちりとした身なりが、ジーンズにラフなシャツという服装になっている。
時間がない時、いつもルートヴィッヒが選ぶ格好だ。

時がたっていても、弟の変わりなさが嬉しかった。
しかし問題は、どうして、ルートヴィッヒに時間がないか、だ。


 (こいつときたら、壁が崩れてからというもの、笑顔よりもいかめしい顔付きのほうが 多いときてやがる。俺がずっと見たかったのは、お前が笑う顔なんだぜ。
 少しは、兄ちゃんに笑ってみせろっていうんだ。)


「お前なあ、俺の事はいいからさ・・・・。」

そう言って、ギルベルトは弟をぎろりとにらむ。

「お前にな、聞きたい事があるヴェスト!」
「なんだ?兄さん?」

こういった顔つきの時の兄には、注意しなくてはならない。
むかしから、真剣にしかる時、兄はこういう表情になる。

それすらも、まだ懐かしくて、今のルートヴィッヒは、涙が出そうになるのをこらえる。



「お前・・・めちゃくちゃ忙しいんだろ?俺のとこに来てる書類・・・・まさかお前が処理してるんじゃないだろうな?」

「心配ない。あれくらいはこなせる。忙しいのはいつもの事だ。」

「俺の仕事は、俺がする!そんなとことくらい、お前だってわかってんだろ!」

「すまない、兄さん。興奮しないでくれ。あと大きい声を出さないでくれ。ここは病院だ。」

予想通りの兄の詰問に、しれっと答えるとルートヴィッヒは花瓶の水を替えに行く。

「こら!ヴェスト!待てって!俺の話を・・!!」



「よろしいですかな?」



病室の戸口にふいに現れた男たちに、ルートヴィッヒはぶつかりそうになった。


「ギルベルト・バイルシュミット殿の病室はこちらだと聞いたのですが・・。」


背の高い、何気なくだが威圧感を感じる堂々とした体躯の男が二人。

一瞬、ルートヴィッヒは警戒したが、彼らからはまったく悪意が感じられなかった。
それどころか、独特の雰囲気を持つこの男たちをどこかで知っているような気がした。


「はい。そうですが・・今日の面会の予定は・・。」

ルートヴィッヒは、ちらりとギルベルトを見る。
ギルベルトも突然現れた男たちに驚いているようだ。
一応、「国」である彼らの警備は厳重になされているはずで、よほどの人物でないとこの病室へは通されないはずだ。

男のうち一人が深々と頭を下げた。

「面会の予約は取っておりません。非礼はお詫びいたしますが、この機会を逃しますとバイルシュミット殿と、もうお会いすることは出来かねると思い、参上いたしました。」

男たちは仕立ての良いスーツをまとっている。
一人は30代の半ば、もう一人は70代か80代か・・・。
しかし、サラリーマンや役人にはまったく見えない。

(・・・懐かしい・・・・?なんだこの感じ・・・・。)

ギルベルトは二人の男から目が離せなくなった。
見覚えはないはずなのだが、この懐かしさは一体なんだ?

「なあ・・・・俺・・・どっかで、あんたたちに会ったことないか?。」

「兄さん!ちょっと・・。」

ぶしつけなギルベルトの質問に、二人の男はちょっと笑うと、若い方の男が言った。

「お会いしたことはございませんよ。私どもとは。
しかし、かつての同胞はあなた様とともにおりました。
遠い昔ではありますが・・・・。」

「・・・・?」

ルートヴィッヒは、ふと思い出した。
この二人・・・・・ひょっとして・・・・・。

「自己紹介いたしましょう。わたくしどもは、ドイツ騎士団。「現在の」ドイツ騎士団の司教をしております。」

ギルベルトが絶句した。

ドイツ騎士団・・・・それはかつて「自分」だった存在・・・・。
たもとを分かってから、もう500年ちかくなろうか・・・・。

「一体・・・・・・・どうして・・・・。」

ギルベルトもルートヴィッヒも驚きのあまり声にならない。


二人の司教はお互いに目配せすると、ぼろぼろになった紙の束のようなものを取りだした。

「こちらを覚えておいででしょうか?」

ずいぶん古い。しかも、年月にさらされただけでなく、もとの質も悪いらしい。