死ぬ前
病院に着いて、まず驚いたこと。日本のエンバーミングも捨てた物じゃないね。
だって、帝人くんがまるでいつものように寝ているみたいなんだ。
そっと、冷たくなっている帝人くんの頬を撫でる。
「イザにぃ・・・」
「兄・・・」
「臨也・・・」
九瑠璃と舞流は顔面蒼白、新羅も悲愴な顔をしていた。
あぁ、どうしてだろうね。どうして君が逝ってしまったの?どうして、君だったの?
こんな、何億人もいる人の中でどうして帝人くんだったの?あぁ、神がいるというのなら不公平にもほどがある。
「帝人くん・・・」
俺は帝人くんの額に唇を落とす。ぬくもりなんて感じない、冷たいタダの抜け殻。
俺は新羅の方を振り返る。新羅は俺に一枚の紙を手渡してきた。
俺はその紙を受け取るなり、走り出す。赦さない。赦さない。赦さない。
(絶対に赦さない・・・!)