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GUNSLINGER BOYⅦ

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それはこっちのセリフだ。
声を聞いただけで頭に血が上るのが分かる。
ああ、こいつは、殺さないと。

「・・・てめぇこそ・・・・なんでここにいやがんだよ」
「キミみたいな脳内筋肉に言っても時間の無駄だから」
「そうか・・この街に戻ってきたってことはわざわざ俺に殺されに帰ってきたってことだよな?そうだよな。よし分かった」

爆発的に膨らむ殺意にまかせてもう一つのソファを片手で掴む。
握力で握った部分が歪む。
ミシミシと音を立てて、ゆっくりとソファが浮いていく。
静雄の血走った目にはもはや臨也の姿しか映っていない。

臨也は何か思い当たったように「ちっ」と舌打ちすると冷たい声で言った。

「静ちゃん。ちょっと待って」
「なんでてめぇ殺すのに待たなきゃなんねぇんだよ・・・」
「だから待てよ単細胞。多分俺たち、謀られた」
「謀ったあ・・・?」
「そう。ハメられたんだよ。あの人に、だから・・・」

ブチリ、と何かがキレる音がした。


「俺をハメたのは・・・・・・てめぇだろうが~~~っ!!!!!!」


振りかざされたソファが真っ直ぐに臨也に向かって投げ飛ばされる。
しかし・・それが、臨也にぶつかることはなかった。



「は・・・・・?」



投げ飛ばされたソファは臨也の直前で空中停止した。
驚きで目を見開くと、ドスンと部屋を震わせるような音を立ててソファが床に落とされる。
そして次の瞬間、そのソファを蹴って黒いモノが静雄に飛びかかってきた。

「ちっ・・!? 何だおまっ・・・・! がっっ!!!」

一撃目の蹴りを片腕で防いだ後、間髪入れずに腹に叩き込まれた衝撃と激痛に静雄は顔を歪めた。
常人ならば体ごと貫通していたであろう一撃だったが、ナイフすら5ミリしか刺さらない腹筋は持ちこたえた。そのことに黒帽子も驚いた様子で腹へ穿った掌手を引き、動物的な動きで間合いを取ると跳躍して静雄の首元めがけて蹴りを加えてきた。防いだ腕の衝撃が小柄な肉体から繰り出された攻撃とは思えない。静雄でなければ腕が折れていた可能性もある。

「ちぃっ!!」

力任せに弾き飛ばすと黒帽子は猫のような俊敏さで空中で体を捻って片手で床に立ち、逆立ちの体制から脇腹に蹴りを入れてくる。バランスを崩した瞬間に繰り出された眼つぶしをすれすれでかわすとサングラスが飛び、どこかが切れたような痛みが走った。気にせずその攻撃の一瞬の隙に黒帽子の頭を横から殴るが、直前でかがまれたのか手ごたえは無く黒い帽子だけが宙を舞う。
感覚で膝で思い切り蹴り上げると小さく呻く声が聞こえたが次の瞬間に首筋に感じた風に一瞬の判断で身を引き、その手を掴む。
その細い首をもう片手で掴んだと同時に自分の喉元にも手の感触。
目が、合った。


「な・・・・・・・」


絶句した。
それしかできなかった。
深海を思わせる青く澄んだ瞳。
短く切りそろえられた黒髪。
ほんの数日前の些細な、しかし、忘れ難い出遭いの・・・

『お兄さん、優しいんですね』

そう無邪気に笑ったのと同じ顔は、無表情に静雄を見つめていた。




「はい、そこまで」


落ち着いた声が部屋に響いた。
はっとそちらを見れば後ろに黒いスーツ姿の男を数人連れた四木が笑顔でこちらを見ていた。
いつからいたのかは分からない。


「・・・悪趣味が過ぎますよ。旦那」

臨也がひどく低い声でそう言うと、四木は口元を歪めて柔和そうに笑った。

「すみません。〈喧嘩人形〉と〈義体〉、天然ものと人工物の一戦をどうしても観戦したくて。義体の性能もこの目で見ておきたかったですしね。
それに、悪趣味なのはお互い様でしょう?情報屋。」

臨也は何か言いかけて、しかし珍しく口をつぐむとキッと静雄を睨んだ。
血のように紅い瞳が憎悪に揺れている。

「さっさとその手、離せよ」

一人状況が飲み込めない静雄が自分が掴み上げている少年に視線を戻すと、
少年は静雄の喉元にあてていた手をそっと離してなぜか安心したように微笑んだ。
あの時と同じ笑顔だった。
静雄は戸惑ったまま手を緩めた。
床に下ろされた少年は俊敏な動作で臨也のもとに駆け寄り、守るように臨也の前に立った。そして警戒するような視線を四木たちへ送る。
四木はその姿を見て興味深そうに言った。

「ほう・・こう見ると普通の子供のようですね。先ほどまで喧嘩人形と互角に渡り合っていたとは思えない」
「互角・・・? 馬鹿にしないで下さいよ」
「お互い腹に一発ずつくらったでしょう?」
「普通の人間なら最初の一発で死んでますよ。そいつの腹筋がおかしいんです」
「まぁ、この子の性能と公社の技術力は認めますよ」

警戒されているのも気にせず、四木は臨也たちに近づくと少年の前にかがんで小さな顎をくいっと持ち上げる。
すぐに臨也が少年の短い髪を掴んで引っ張り、自分の方へ抱き寄せる。

「・・不用意に触って殺されても責任はとれませんよ?四木さん」
「あなたに危害を加えない限りは平気だと聞きましたが」

完全においてけぼりをくらっている静雄はとりあえず四木に問いかけた。

「あの・・・四木の旦那」
「ああ、すみませんね平和島さん。つい珍しいものに目が行ってしまって。」
「今日の仕事ってまさか・・」
「おかげで久しぶりにいいものが見られました」

四木は立ちあがり、ドアの方を指さしながら言った。


「ではお二人とも、落ち着いて話ができる部屋に移動しましょうか」

作品名:GUNSLINGER BOYⅦ 作家名:net