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籠を発つ鳥

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「僕は今でも、為政者としてのあなたを誇りに思っています。いつか領主となるときには、絶対に手本とさせて頂きたいと思うほどに」
「…………」
「ですが、僕は母上───サリシア・ハイデリヒではありません。…だからもう、僕に母上の影を求めるのはやめにしましょうよ」
うまく笑えていたかはわからない。
「あなたを恨んではいません。憎んでもいませんし、嫌いにもなっていません。…まだ間に合うなら、親子としてもう一度やりなおしましょう」
「……っ」
「僕はあなたの嫡子、アルフォンス・ハイデリヒです。───ジェラルド・ハイデリヒ侯爵、あなたの跡継ぎとして、僕は生きていきます」


籠の扉を、開け放つ。
「……ちちうえ」
ああ、ようやく呼べた。
「父上」
かすかに震える足を、ゆっくり前に踏み出した。
「僕は、あなたの、何ですか?」


こつ、と小さな靴音だけを残して、そのひとの前に立つ。
「───おまえは私の、たった一人の息子だ。アルフォンス」
椅子から立つことを忘れたそのひと───父上が、おそるおそる僕に触れる。
「…すまなかった、アルフォンス」
肩に、頬に、両手が伸びる。
「本当に、なんと詫びて良いのか」
「いいえ、もう良いんです。───あなたに名を、呼んでもらえたから」
父上の瞳に、僕の顔が映る。
「それだけで、充分です」






母上の影という籠の中から解き放たれた僕は静かに飛び立ち、父上の肩にそっと頭を載せる。







瞳を伏せたその表情は、ちゃんと『僕』として笑えていた。





作品名:籠を発つ鳥 作家名:新澤やひろ