喪失と再生のソネット
キーンコーン、カーンコーン…
「…夢」
そっと瞼を持ち上げれば、空は快晴。
どうやら自分は長い過去の夢を見ていたらしい。
雲雀はそのまま、ぼんやりと仰向けで空を眺める。
…あれから数百年、時代は急速に変化し妖は今、人に混じって生活するようになった。
雲雀も今は学校に通い、風紀委員長として人間界に君臨している。
妖にとって、数百年はあっという間だ。
普通なら記憶にだって朧気にしか残らない程度のもの。
なのに、綱吉と過ごしたあの時代が未だに忘れられない。
『また、逢えたら』
(君は…何を言おうとしてた?)
思い出しては悔しさでくしゃり、顔が歪む。
もう一度、彼に逢いたいなんてそんなの、無理に決まってる。
我ながら、なんて女々しい考え。
雲雀はその考えを振り払うように起き上がり、仕事を片付けるべく応接室へ足を向けた。
その時、
…ガチャ、
ドアノブが回り、扉が外部からの人間を受け入れる。
隙間から覗いたのは逆立つ亜麻色の髪。
まさか、まさかまさかまさか――
「…ぁ」
…雲雀は思い出す。
人間とは、儚き一生を終えてもまた、この世に舞い戻ってくる生き物だということを。
【Un sonetto della perdita e la riproduzione】
結ばれない想いなんて、僕らには存在しない
作品名:喪失と再生のソネット 作家名:雪兎