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ルパン三世パロを静帝で妄想してみた。

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 ダラーズと呼ばれる怪盗グループがいる。

 その手口は神出鬼没で大胆。決して無関係な人間には手を出さず、姿も変幻自在で尻尾をつかませない。そして、ターゲットは値段の如何ではなく曰くつきの物しか盗まない一風変ったドロボウ。

 ネットワークを操る小柄な少年と、彼とは対照的な人を食ったようなもう一人の少年、不思議な刀を持つ少女からなるその3人組。

 これは、そんなドロボウたちと、ドロボウの一人に恋した普通ではない刑事の物語。

 









 大きく開いた胸元から、豊満な柔肌が覗いている。きゅっと真ん中に寄った谷間は、男であれば・・いや、女であっても思わず触りたくなってしまうようなシルエットで誘っていた。胸の下で締められ、そこからAラインで流れた裾を裁きながら、女は優雅に歩く。

 光沢のある黒い生地が女の白い肌を際立たせていた。幼い顔立ちでありながらも不思議な魅力を持つ女は、周囲の視線を引きつけながら一人広場から離れていく。

 誰もがその存在を気にしながらも、何故か声をかけられない雰囲気の女の後姿をそわそわと見送る男の視線を一蹴し、その女が角を曲がったときだった。

 「レディ」

 男が一人、声をかけたのは。

 「お一人ですか?」

 余計な視線からさえぎられたそこで、女は振り向く。長く伸びたストレートの黒髪が、彼女の動きにあわせて揺れた。

 黒く大きな瞳が捉えたのは、一人の金髪の男だった。高い身長に、整った顔立ち。細い身体は大人しそうにも見えるのに、どこかそれが印象とかみ合わない。

 「いえ、連れとはぐれてしまって」

 そんな男に向って、女は困ったように小首をかしげた。

 「このパーティーには、今ドロボウからの予告状が届いています。あまり一人で歩かれるのは危険ですよ」

 主催者の意向で表ざたにはなっていないが、今日のこのパーティーのメインであるクレオパトラの涙と呼ばれる宝石のついたネックレスにはある怪盗の予告状が届いている。口には出さないが、参加者はそれをみな知っている。殺人は犯さない主義である怪盗であるから自分たちの身に害が及ぶことはない。だからだろう、どこかその怪盗が現れてくれることを心待ちにしているような浮き足立った空気があるのは。

 しかし、そんなことは宝石を守る立場である警察には知ったことではない。主催者の要望で決して表立って警備をすることは出来なかったが、しかしこの会場にも、何人かの警官が正装姿で紛れ込んでいた。 

 この金髪の男のように。

 「見えないでしょうが、これでも警察です。警備の一環でもありますから、よろしければ連れの方が見つかるまで付いていましょうか」

 男の取り出した警察手帳には、目の前の男とは同一人物とは思えない柄の悪そうなサングラスの写真が載っていた。平和島静雄という名前と共に。

 手帳を目にした女は、わずかにこてりと首をかしげて男に告げる。

 「ありがとうございます、でも、すぐに見つかるでしょうから大丈夫ですわ」

 控えめではあったが、それは申し出を断る言葉だった。

 「そうですか」

 男は、にっこりと笑う。それは男の着る黒の正装とその場の雰囲気に似合う、柔らかなものだった。ただ、そこまでは・・・

 「でも」

 声のトーンが瞬間的に低く落ちその場に響く。まとう空気が、がらりと変り瞳に凶暴な光が宿る。それは、捕食者の目。そして、男――静雄は女に向って確信していた言葉を口にした。

 「こっちには用があるんだよ・・・・帝人」

 「・・・・・」

 女――帝人がにっこりと顔に笑顔を貼り付けたままくるりと方向転換しようとしたときには、もう遅い。手首をがっちりと握られ、さらにガシャンと手錠をかけられた。

 「あ・・・」

 間抜けな声が、女の形のいい唇から漏れる。

 手錠の反対側は、静雄の腕に。

 「あ――あ・・・」

 繋がった腕を見下ろしながら、女性――帝人はため息をつく。動きづらいなぁなんて、そんな暢気なことを思いながら。

 「・・・・なんで分かるんですかね。静雄さんには」

 今日の帝人の変装は完璧だったはずだ。においも、身体も、身長はまぁ限度があるけれども、特殊な素材で作った胸も、顔にだって薄いマスクをつけて多少ではあるが変えられていて普通ならば分からないはずなのに。

 「舐めんな。見れば分かる」

 「なんかもう、本能ですよねそれ」

 そう厭味を言いたくなるのも仕方のないことだろう。出会ってからこの方、静雄に帝人の変装が通じたことはない。男だろうが女だろうが老人だろうが老婆だろうが、静雄は何故か帝人を見つけ出す。

 自分の2人の仲間の変装は見つけられないのに、帝人だけは何故か確実に。

 それはもう、獣並みの本能としかいえないだろう。

 帝人の決して褒めてはいない言葉に、静雄は怒りもせずにふんと鼻を鳴らして当たり前のように言った。

 「愛だろ」

 そーですか、としかいい用がない。

 この平和島静雄という男に、帝人は妄執のように愛されている。警察とドロボウという関係から決して結ばれるわけはないのだが、静雄は諦めることはない。

 この、離さないようにつながれた恋人つなぎの手が証明するように。

 (ま、諦めないようにしたのは僕だけど)

 内心肩をすくめるが、反省している様子はかけらもなかった。

 しかし、である。

 べつに静雄の愛はいいのだけども、ここまで仕事に支障をきたすとどうなのだろうか。こうして捕まってしまったわけだし、さすがに後で怒られるかなとは思うものの帝人に焦る気配はない。

 捕まえても別の場所に移るでもなくタバコを吸いだした静雄の横で、帝人はトンと壁に背をつける。それを、静雄はタバコの煙を吐き出しながら見下ろしていた。

 「これですか?」

 そんな静雄に向かって、帝人は自分の胸を指差す。

 自分を見下ろしている静雄の視線を、帝人は胸に向かっているのだと思ったらしい。

 「きれいにできてるでしょ?さわり心地も、本物そっくりなんですよーっ」

 膨らんだ胸に手を当てながら、感心したように帝人は言う。

 「なんか、こういうときだけ正臣って本気だすんですよね。・・・まぁ、分かりやすくていいですけど」

 仲間の一人の名前をだし、これが出来上がったときの彼のあの笑顔を思い出す。すごくいい笑顔をしていたなということを。

 「触ります?気持ちいいですよ?」

 持ち上げて静雄の方に差し出せば、動揺のひとつもなく静雄はそれを一蹴した。

 「興味ねぇ」

 どうも見ていたのは、胸ではなかったようだ。

 「胸が?それとも、僕がですか?」

 「お前のわけがねぇだろ。胸がだよ」

 つまり見ていたのは胸ではなく帝人ということか。

 こんなにきれいなのに。盛れてるのに。興奮するとまでは行かなくても、ちょっとでも興味を持たないなんて男としてどうなのだろう。

 「・・・・静雄さんって、真性ですか?」