泡沫のあわい
轟々と雨が降っている。
飛沫をあげる大地は、すでに一片の空白もなく埋め尽くされていた。
どろりとした赤に、撒き散らされた臓腑に、鼻をつく生温い臭気に、もはやかつて息をして笑っていたとは思えぬ無数のひとがたの残骸に。死が色濃く染みついたその地を、少しでも浄化しようと言わんばかりに、驟雨が一帯を包み込んでいた。
そのさなかで家康は、全身を朱と泥とで斑に染めた男を地面に叩きつけた。そして男が身を起こす間を与えず、馬乗りになって叫ぶ。
己の上で悲痛な声をあげ、顔を歪めて全身を震わす家康に対して。
何ら表情を変えぬままに、三成は答えた。
―――それは貴様のことだろう。
降りしきる雨の中で、その声ばかりがいやにはっきり耳に届いた。
飛沫をあげる大地は、すでに一片の空白もなく埋め尽くされていた。
どろりとした赤に、撒き散らされた臓腑に、鼻をつく生温い臭気に、もはやかつて息をして笑っていたとは思えぬ無数のひとがたの残骸に。死が色濃く染みついたその地を、少しでも浄化しようと言わんばかりに、驟雨が一帯を包み込んでいた。
そのさなかで家康は、全身を朱と泥とで斑に染めた男を地面に叩きつけた。そして男が身を起こす間を与えず、馬乗りになって叫ぶ。
己の上で悲痛な声をあげ、顔を歪めて全身を震わす家康に対して。
何ら表情を変えぬままに、三成は答えた。
―――それは貴様のことだろう。
降りしきる雨の中で、その声ばかりがいやにはっきり耳に届いた。