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【ヘタリア】兄さんの子守唄 前篇

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「兄さんの子守唄」前篇


Weist du wieviel Sterne stehen     星がいくつあるか知ってる?
an dem blauen Himmelszelt?      青い空の上に
Weist du wieviel Wolken gehen     沢山の雲がどうやって漂うか知ってる?
weithin uber alle Welt?         広い世界中に
Gott, der Herr, hat sie gezahlet,     神はそれら すべての数をご存じで
das ihm auch nicht eines fehlet,     おられます                  
an der ganzen grosen Zahl,       どれほど沢山の数であろうと  
an der ganzen grosen Zahl.       どれほど沢山の数であろうと




ベルリンの街に教会の鐘が響く。

静かに行われたミサは、出席者もまばらで寂しいものだった。

数人の軍服姿の男たちが、ミサの後の礼拝堂で不服を漏らしていた。

「・・・私は残念でなりません!!国家殿!!あれほどの方が・・・!!なんの評価もされず、ましてやその功績をまったく認められずにいるなどと!」
「私たちの書いた追悼の辞は、国王陛下によってさしとめとなりました・・・。」

怒りと悲しみをギルベルトに向けてくる二人の男。

軍の中枢にいる者たちと、国王との軋轢は、プロイセン=ギルベルトにとって頭の痛い話だった。

「認めてないわけじゃねえ。認めさせるさ。もう少しの間待ってろって言ってんだ。
やっとプラハから、奴の墓をもってこれたんだ・・・。今は祈ってやれよ・・。」

奴とは、シャルンホルスト中将のことだ。
後に、参謀本部制度の産みの親として知られる彼も、この時は、不遇の死を迎えていた。

シャルンホルスト中将が亡くなって、プロイセン軍内部の不満は急激に高まっていた。
フリードリヒ・ヴィルヘルム3世は誰の目から見ても、無能で頑迷な国王だった。

(まったく・・・・フリッツ親父の後は・・・・ろくな王がいやしねえ・・・。)

ギルベルトはため息をつく。
優柔不断で無能な現王、前王のあきれ果てるほどの漁色。

フリードリッヒ大王と称される「親父」の配下の将軍は老齢を迎え、実際に戦ったことのない旧弊な烏合の衆がプロイセン軍にはひしめきあっている。
ナポレオン軍にはあっさりと負けた。
国王は、東プロイセンへと逃亡し、王妃ルイ―ゼの必死の努力によって、王国はようやく存続を許された。
それでも、屈辱的な条約を結ばされ、国土の半分はフランスのものとなってしまった。


それでもこうしてプロイセン国内に、優秀な人材が育っているのがせめてもの救いだった。
目の前のグナイゼナウとクラウゼヴィッツは、不満を漏らすが、ギルベルト自身もこのままで終わらせる気はまったくない。

(上が馬鹿なら・・・それを支えなきゃなんねえ奴は優秀にならざるをえない・・・か。)

「お前たちが改革した陸軍大学な・・・。あそこから、将来お前たちの理想と信念を体現する奴らがでてくるさ・・。ナポ公だっていつまでもいやしねえ。
だからな・・・今は待て。」

「しかし・・!!国王は、まるでフランスのいいなりです!!」
「カール!声が大きい!聞こえるぞ!」

若いクラウゼヴィッツは不満を隠しきれない。
それをたしなめるグナイゼナウ自身も、国王と政府に対し、シャルンホルストの功績を認めるようにと、猛抗議をしている。

ずきっとギルベルトの傷が痛んだ。
うまく隠してはいるが、ナポレオンによって受けた傷は深く、今となっても完治はしていない。国民が受けた衝撃の大きさと、国土を取られた事によって、体は弱ったままだ。

(死んだかと思ったがな・・・・一時は・・・。それでも俺はまだ生きてる・・。)

生きているし、まだ失った土地をあきらめたわけではない。
取り戻す。
ロシアでのナポレオンの大敗の報を聞き、フランスに攻められた国々は、それぞれの思惑を巡らせている。
対ナポレオン同盟を有効なものとして、今度こそ、奴を倒さなければ!


「今度の同盟で、ナポ公が身動きとれねえまでに追い込むぞ。それまで待て。」

ギルベルトは痛みを押し隠して言う。

「国家殿がそうおっしゃるのなら・・・。」

「中将閣下のとむらい合戦です!!」


3人は、教会の外にでて、街の陸軍大学のほうへと向かう。

ふと、先ほどから遠くでずっと聞こえていた歌が近くになる。
学校とおぼしき建物の中からその歌は聞こえてくる。



Weist du wieviel Kinder schlafen,  眠っている子供がどれくらいいるか知って                    る?
heute nacht im Bettelein?      聖なるこの夜に
Weist du wieviel Traume kommen  沢山の夢がどこから来るのか知ってる?
zu den muden Kinderlein?      幼い子供たちの元に
Gott, der Herr, hat sie gezahlet,   神はそれらすべての数をご存じで
das ihm auch nicht eines fehlet,    おられます
kennt auch dich und hat dich lieb,  神はあなたたちの全てをご存じで
kennt auch dich und hat dich lieb.  あなたたちを愛しておられます


「ずっと聞こえてたな・・ミサの最中・・・この歌・・・・。なんていうんだ?」

「さあ・・・?子供向けの歌のようですが・・・?」
「ああ、これは女学校かなにかで最近歌われているそうですよ。
昔からあるメロディに歌詞を載せたらしいですね。前に妻が歌っておりましたから・・。」

クラウゼヴィッツは言ってから少し赤くなった。
彼は、王妃の女官長を務める伯爵令嬢マリーと一昨年結婚したばかりだった。

にやっとギルベルトは笑った。
優秀な彼が惚れこんだ女性は、美しく賢く、何事にも思おじしない人だった。
彼女になら、生まれたばかりの「弟」をまかせられる。
現にルートヴィッヒは、今はクラウゼヴィッツの屋敷の中に、秘かに預けられていた。

(あの無能な国王に、天から授かった大事な弟を渡せるものか!

俺がどれだけ待ったと思ってるんだ・・・「ドイツ」が生まれるのを!)


王妃ルイーゼといい、今のプロイセン王室は、女性ばかりが優秀だ。
男はフリッツの子孫の一族と思えぬくらい、だらしない。

(まあ、それは仕方ないか。親父ん家の、ホーエンツォルレン家は、「とびとび」でないと優秀な奴は出ないからな・・・どういうわけだか・・・。)

「ふん・・・このメロディはいつだったか兵士たちが歌っているのを聞きましたな・・。
今の流行りなのでしょう。」

同じように、若い部下を見ながらグナイゼナウもにやりとする。
扱いにくい国王も、この部下の妻と王妃の連携から、少しはコントロールが聞くようになってきた。