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【ヘタリア】兄さんの子守唄 前篇

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国王の機嫌も、マリーから情報が伝わってくる。



それにしても、どうして「国家殿」の「上司」が国王であるのか・・・・。
「国家殿」自身が「国の最高権力者」であれば・・・。

二人は何度思ったことか。
ナポレオンにあのような無様な負けを喫することもなく、国土の半分を失うような憂き目にあうこともなかったのではないか・・。

「プロイセン」殿は笑って言うのだ。

「俺はよお・・・お前たち国民の総意で出来てるようなもんだからよ。国王に従うのは当然だろうが。お前たちがどんどん優秀になってくれて強くなってくれりゃ、俺も強くなるって寸法さ。だからよお。軍の改革を推し進めて、あの馬鹿・・がいなくなったら・・な!」

何百年と生きているという「国家」の象徴。

その人懐こい性格と、恐ろしいほどの軍才とが一緒になっている姿は実に魅力的だ。
横柄だと国王が激怒するその態度も、暗愚な王を身近で見ているものにとっては、かえって小気味よい。

「国」に「人」がひかれるのは当たり前だ、お前らは俺を崇めすぎだ、というギルベルトの反論も、グナイゼナウとクラウゼヴィッツにはただの謙遜に映る。

年月が彼をここまでの戦略の天才にしたのか、それとも彼の言うように、
「自分たち」のおかげで「彼」が天才であるのか・・・・。

どちらにしても、ギルベルト・バイルシュミットという「人」に魅かれてならない。

最前線にでる「国家殿」など、バイルシュミット卿以外は、欧州広しといえども、いない。
それだけに誇らしく、彼のためになら戦うという兵士たちはプロイセン軍内部にあふれている。
ましてや今は、ナポレオンにぶざまに敗れ、国の存亡すらあやうかった。
真っ先にケーニヒスベルクへと逃げた国王よりも、怪我を追いながらも、兵を励まし、
孤軍奮闘するバイルシュミット卿の姿は、多くのプロイセン兵士たちに希望を与えたのだ。

最高司令官である国王の命令よりも、バイルシュミット卿の命令を遵守する、という部隊が戦場で実際に現れてしまった時は、それを王室づきの貴族の司令官たちに隠すのに一苦労した。

一度でも、プロイセン国の軍務についた者にはわかってしまっていた。
旧弊な、フリードリッヒ大王の時代の軍隊など、今はどこの国にも勝てないということを。

軍の改革の波は押し寄せているものの、フランスに気をつかい、国王自身によって何度もつぶされている。クラウゼヴィッツもいまだに軍に戻れない。

それでもなんとか、シュタイン首相とシャルンホルストらの改革は、つぶされながらも、少しずつプロイセン国内に浸透している。

これで、落ち目のナポレオンに勝つことが出来れば・・・・・。

落ちた国威を戻せるし、失った産業の基盤の地も回復できる。

そんな思いの二人の前で、「国家殿」はのんびりと歌に聞き入っている。


「そんなにお気に召しましたか?この歌が。」

「いや・・・ルッツに・・・歌ってやろうかなって思ってよ。」

「ルッツ・・・・・・・・・・ルートヴィッヒ様ですか・・・。」

「ああ・・・・。俺は、子供むけの歌とかなんにも知らねーからな。ちっとは覚えて、あいつをあやしてやんないと、ルッツに忘れられちまうだろ。」

嬉しそうに言う国家殿を、二人は複雑な思いで見つめる。



「ルートヴィッヒ」とギルベルトが言うのは、「統一ドイツ」の事だ。

オーストリアとプロイセンが常にその覇権をねらい、争っている。
しかし、「統一ドイツ」としての存在の「ルートヴィッヒ」は、「プロイセン」=「ギルベルト」=「俺」の元に、生まれてきた、と国家殿は誇らしげに言う・・・・。

正直、二人には、よくわからない。

「国」を象徴する「存在」があるのはわかる。
現にギルベルト殿は「プロイセン国歌」殿だ。

オーストリアには「エーデルシュタイン」殿がいる。

それと同じように、「統一ドイツ」殿は、あの赤子・「ルートヴィッヒ殿」だという。

しかし、どうしてまだ「生まれてもいない統一ドイツ」がルートヴィッヒなのか?

人間には理解できないことなのか、「国」の「存在のしくみ」はよくわからない。

ただ、手放しで「弟」とルートヴィッヒを呼び、あの赤子を可愛がるギルベルトの姿を見るとプロイセン軍人である二人は複雑だ。

「統一ドイツ」ということは、「プロイセン」も、オーストリアも、バイエルンもザクセンも、すべて一つの「国」になる、ということだ。

自分たちは「プロイセン」王国の住民だ・・・・・。
どうして、「他の国」になろうというのか?

ギルベルト・バイルシュミット卿が、元「ドイツ騎士団」という名であったのは知っている。ブランデンブルク公国と一つになり、「プロイセン公国」となった。
二人はギルベルト自身からそれを聞いたのだ。
そして、今、プロイセン王国として、ナポレオン帝国を崩そうとしている。

何故、「プロイセン」が「ドイツ」を望むのか・・・。
単に、覇権争いのための「名目上のドイツ」ならば、昔「神聖ローマ」という国があった。

あれは、名ばかりの、「国家」ですらない「帝国」だった・・・・・。
それと同じような存在であるならば、ある程度は受容しよう。
しかし、プロイセン王国よりも、「上」にそびえる「統一ドイツ」となるのであれば、話は別だ。

われわれは、「統一ドイツ」のために戦っているのではない。
「プロイセン」のために戦っているのだ・・・・・。


機嫌良く、歌をハミングしているギルベルトを見ながら、二人は考え込んでしまった。


Weist du, wieviel Kinder fruhe   何人の子供が朝に起きあがるか知ってる? 
stehn aus ihrem Bettlein auf,    その小さなベッドの上で
Das sie ohne Sorg und Muhe    心配事や問題もなく
frohlich sind im Tageslauf?     一日中、幸せに
Gott im Himmel hat an allen    神はあなたのすべてを喜び、
seine Lust, sein Wohlgefallen,    あなたは神の宝
Kennt auch dich und hat dich lieb.   神はあなたを知っており
Kennt auch dich und hat dich lieb.   あなたを愛している  


************************************




「ルッツ!!可愛いルッツ!!」

部屋に入ってくるなり、ギルベルトは両手でベッドからルートヴィッヒを抱きあげた。

「・・・・ぷ・・ぷう。」

目をまんまるくしながらも、抱きあげられた赤子は泣きもせずに、機嫌良く笑っている。

「まあ、国家様!そんなに振り回したら、ルートヴィッヒ様の目がまわってしまいますよ!」

クラウゼヴィッツの妻のマリーがあわててギルベルトを止める。

「ははっ!大丈夫だ。お前は強いよなあ、ルッツ?いい子だよなあ?ルッツ!」

「ぱぁぁー、ぷー、ぷーー!!」

ふりまわされながらもきゃっきゃとルートヴィッヒが喜んでいる。