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【ヘタリア】兄さんの子守唄 前篇

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「うん!」

さすがはギルベルト様の弟君だ・・・・。
こんな不測の事態にも落ちついている。

ルートヴィッヒのドアを見張る兵士たちに指示を出してからシュタインは、情報を集めに行った。


部屋の中でルートヴィッヒは不安に押しつぶされそうになっていた。

兄は大丈夫だろうか?
暴動が起きているというのに、そのただなかを馬で駆けていったのだ・・・・。
国王の宮殿まで、無事にたどり着けるだろうか?

兄の無事を祈りながら、前にもらった短剣を握り締める。


(どうか、兄さん!!無事に帰ってきて!!)

外はあわただしく、兵たちは駐屯地の門にバリケードを作り始めている。
市民軍の声がこの屋敷まで響いてくる。

〈窓のそばにいてはいけない。〉

外から、標的となってしまう。

〈部屋の中をのぞかれてもいけない〉

内部の様子を知られると不利となる。


はっと、気付いて窓から離れてカーテンを閉める。
兄の教えをルートヴィッヒは思い出した。


そっと小銃を手に持つ。十字架のペンダントに作り直したアイクチの短剣は首から下げてシャツの下にしまう。

ドアの外には護衛の兵士がいるとはいえ、もし、暴動を起こした市民がなだれ込んできたら?

〈最後は自分で自分の身を守る。〉

兄の教えを頭の中で繰り返す。



どれほど時間がたったろう?
急に、屋敷の外が静かになった。

市民軍の声がしない。

いったい何がおきているのだろう?
シュタインもまだ戻らない。

突然、ドアの外で大きな音がした。
護衛の兵士たちが誰かとやりあっている。

ルートヴィッヒの顔から血の気が引いた。



ドアの外が大騒ぎになった。続いて聞こえるうめき声。

次に剣を打ちあう音がする。
ルートヴィッヒは、腰に下げたサーベルを引き抜いた。

その瞬間、ドアが蹴破られた。

なだれ込んでくる兵士たち。
それを押し返そうとする護衛の兵たち。
護衛の兵に交じって、シュタインがいた。

「ルートヴィッヒ様!!お逃げください!!」

シュタインが叫ぶ。

「シュタイン!!」

ルートヴィッヒは執事を助けようと、シュタインのほうへと走る。
そのとき、シュタインは兵士の一人に突き飛ばされてルートヴィッヒのほうへと転がる。

「へっ!このユダヤ人めが!!偉そうにしてるんじゃねえよ!」

「こんなところに、隠れてやがったぜ・・・。この餓鬼だろう?ヘルトリング。」
「ああ、そうだ。こいつが「ドイツ」だ。」
「わがプロイセンに「ドイツ」などいらん!」
「さあ、一緒にきてもらおうか!「ドイツ」さんよ。」

明らかにプロイセン正規軍の制服を着た将校。

一体何が起こっているのか?

兄は無事だろうか?

ルートヴィッヒの頭の中で、めまぐるしく考えが浮かんでは消える。

ギルベルトはまだ戻らない。




「兄さんの子守唄」 後編に続く