二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

20101011ペーパー小ネタ【スクザン/SX】

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 
早朝から降り注ぐ、祝福の雨。目を覚ましたXANXUSは、ベッドに座ってその音を聞くともなしに聞いていた。隣にはもはや馴染みすぎて己の一部とも言えそうなほどに身近なものとなった体温。昨夜は意識を失うまで、夢中になって互いの身体を貪っていた。
 隣にいるスクアーロの眠りは深く、まだしばらくは目を覚ましそうにない。それを確認するとXANXUSはその寝顔をじっと見つめてから指先でその髪を梳いてみた。さらりと指の間を抜けて落ちていく銀色の髪。しなやかでつるりとした感触が心地よい。しかし指をすり抜けて行くその感覚が、男の掴みきれぬ性質を指し示しているようでもあってどこか苛立ちにも似た感情をXANXUSは覚えた。
 それを感じたのだろうか、スクアーロが小さく呻いて身動ぎをする。それに気づいたXANXUSは髪に絡ませていた指を引いてスクアーロの様子を窺った。
 僅かに眉根を寄せ、難しいような表情をしたスクアーロ。普段はあまり見ることのないその表情にXANXUSは目を奪われる。
 己が相手にこのような感情を抱いている、と言うことに気づいたのはいつのことだったか。初めは頑なに認めることが出来なかったこの感情も、いつしか自分の中で落ち着いてしっかりと存在の場所を得て、確かにXANXUSの持ち得る感情の一つとして機能してしまっている。
 愛、と言う感情は分からないとXANXUSはいまだに思う。けれど、XANXUSにとってスクアーロが大切で、失えないという存在であること、それは紛れもない事実で否定しがたい感情だ。これを名付けるのならば、やはり恋、や愛、と言った系統のものになるのだろう。周囲の様相からそう推測し、XANXUSはそう結論付けた。
 落ち着いて己の感情を吟味できる、と言う時点で随分と精神的に成長したとXANXUSを知る誰もが思うだろう。XANXUS自身に己が成長したなどと言う自覚は更々無いが、以前と比べれば冷静に己のことを考えることが出来るようになったとは思っている。
 その結果がこれだ。いつからこの男に心を奪われてしまっていたのだろう。恐らくは最初からなのだろうとXANXUSは過去を振り返る。
 誰よりも、何よりもずかずかとXANXUSの心の中へ踏み込んできた男。誰をも近づけまいとしていたXANXUSはしかし、傍若無人とも思える振る舞いで己の心をかき乱したその男だけは拒絶することが出来なかった。なすがままに受け入れていたつもりはない。そんな事はたとえ相手が誰であろうともあり得ない。それでもXANXUSは気づけば確かにスクアーロという存在を受け入れていたのだ。
 受け入れて、そして。いつしかスクアーロはXANXUSにとっては失いがたい存在と成り果てた。些細な言動、思想の違い、苛立つことは数あれどもXANXUSはスクアーロを決して手放すことができない。スクアーロがいなければ『XANXUS』が成り立たない程に、XANXUSはスクアーロに依存していたのだ。
 今となっては否定しがたいその事実を、XANXUSは三十を超えて漸く素直に受け入れることが出来るようになっていた。誰がどう思おうとも、たとえ己がどれほど認めがたくとも、この事実は一向に変わりようがないのだ。
 スクアーロの目覚める気配がないことで、XANXUSは一度は引いていた手をもう一度伸ばしてスクアーロの髪に触れた。己への誓いだというスクアーロの長い髪。この髪は一体いつまで伸ばし続けられるのだろうと思えば、普段は徹底して揺らぎもしないXANXUSの心にも、一抹の不安がよぎってしまう。
 ボンゴレを手に入れることは、XANXUSにとって希望でも夢でもなく確実な将来のビジョンだ。最強のボンゴレはいずれ己の手に落ちてくるとXANXUSは疑う余地もなくそう思っている。
 いつか来る、その日まで。スクアーロはXANXUSの側で髪を伸ばし続けるのだろう。そして、そのいつかが訪れた時には、スクアーロの髪は誓いのままに切り落とされることだろう。それを、己は落ち着いた心境で受け止めることが出来るのか。
 XANXUSは己の感情を顧みて、それを否定することしか出来なかった。誓いの証であるその髪は、言い方を変えればスクアーロがXANXUSと共に生きてきたその長さを示す楔でもある。
 それが失われることに己は耐えられないだろう、とXANXUSは思う。酷く精神薄弱な組織のボスもいたものだ。己の部下の髪一つで精神を揺らがせるようなことになるとは。
 XANXUSは身体を傾けると、いまだ眠ったままのスクアーロの頬に口付けを落とした。唇に触れなかったのは、相手がうつ伏せになったままだからだ。
 ほんの僅かスクアーロの身体を押せば、仰向けになるのは分かっている。恐らくはここまで熟睡していれば目を覚ますこともないだろう。
 それでもXANXUSはそうしようとはしなかった。寝ているとはいえ真正面からスクアーロの顔を見ることが出来るか不安だったからだ。
 スクアーロを失うことが、XANXUSは怖い。このことを認めるのにも随分と時間がかかった。しかしそれを認めた今となっては逆に失うことが怖いからこそ、求めることにためらいが無くなったとも言えよう。
 肌を合わせて、身体を繋げて、それでも満たされない何かがXANXUSの内にはある。スクアーロにはとうにそれを知られていて、与えられることでXANXUSは満足感を得る。
 ねだった訳でもないのに、スクアーロはXANXUSに与え続けるのだ。XANXUSはそれを享受して『XANXUS』として確立し、ヴァリアーのボスとして君臨する。
 甘やかされることに慣れてはいなかった筈だ。しかし気づけばスクアーロがこの上ないほどにXANXUSを甘やかし尽くしている。それを黙って受け入れることが出来るようになっただけでも、XANXUSにとってはずいぶんな進歩だ。
 XANXUSはもう一度頬に口付けようと身体を傾けた。それと同時に寝ていた筈のスクアーロが目を開けて、XANXUSは驚き動きを止めてしまう。
「足りなく、なってたかぁ……?」
 スクアーロは意味の通じぬ事を言って、XANXUSの後頭部へと手を回して引き寄せた。XANXUSは引き寄せられるがままに身体を落として、スクアーロの唇に己のそれを重ねる。
 濡れた音が室内に広がった。唇を重ねるだけでは飽きたらず、舌を絡めて唾液を流し込む。
 スクアーロがそれを飲み込むのが分かってXANXUSはまた充足を覚えた。XANXUSの何かがスクアーロを浸食してしまえばいい。スクアーロの全てを飲み込んで、XANXUSが浸食し尽くされてしまえばいい。
 噛み合わないそれは、紛れもないXANXUSの本心だ。XANXUSは、スクアーロを支配したいと思っている。それと同時にまた、スクアーロに支配されたいとも思っている。
 重ねていた唇をゆっくりと離すと、スクアーロの唇とXANXUSの舌が細い唾液の糸で繋がれ、そしてそれが切れて消えた。唇に残る唾液を己の舌で舐め取って、XANXUSは引き寄せられたままの体勢でじっとスクアーロを見つめる。