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オーバーフロー・アテンション 1

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頭に響く音がある。


耳の奥で響く金切り声に似た高い周波数の音の集まり。蹲って頭を押さえても響くそれは、自室にいると時折襲ってくる。パソコンのしすぎかと休んだり、病気かと思って新羅さんに診察をしてもらったこともある。


だがそれが鳴り止むことはない。音は響く。自分が声を出さない限り。そうなのだ。この痛みは自室でくつろいでいる時、一定の期間で響き出す。そして何か声を通しての反応をすると、一時止み、反応が無いとまた騒ぎ出す。誰かが、生き物がまるで自分の反応を窺って応えているような、訳の分からない状況。


いたい、と一言もらしたなら、次に来るのは必ずキン、と短い高音。そして次にキンキンヒンヒンと喋っているように音が飛ぶ。現実には聞こえてない音だ。自分にしか聞こえてない。正臣を部屋に呼んだ時もこの音の騒ぎは凄まじかった。頭の奥で高く高く鳴り響くそれに、いきなりうるさいと叫んだこともある。正臣は驚いていて、彼には聞こえていないのだと分かった。
音は瞬時に止み、それから小さくピィンと鳴った。本当に訳が分からない。もしかしたらこの部屋になにか住んでいるのかもしれない。そう思うと怖かったが、音の短さや小ささ、それらがどことなくしょんぼりしているように思えて、なぜか同情的な気分になってしまった。音だけなのに。


いよいよおかしくなりはじめたのだろうか、僕も。


それから、部屋にいる時、それも一人の時。
そして週に一度。音は鳴るようになった。



最近では高音だけでなく、低音も聞こえ始めた。ドォ、だとかダァだとかの高音よりかは聞く分にはまだ優しい音。本格的に耳に異常をきたしはじめたらしい。新羅さんのところに何度も通ったが結果は分からずじまい。ため息を自室で呟こうものなら、きっと週に一度のはずの音達がすぐに頭に飛んでくる。やたら気分が悪い時、体調不良の時、そういう時に小さい音達は必ず飛んでくるのだ。もう慣れた。


さらに、今となってはまるで誰かと住んでいる感覚すら覚えてきて本当に困った。怪奇現象が起こる部屋だと出て行けばいいのに、すごいなにこれ非日常の理由で僕はまだこの部屋にいる。



キィ


「……うん、ちょっと頭いたいかな」


ああ、また響いてくる。
頭を拳で軽く叩きながら、僕はその音に言った。
言葉に反応するし、ちゃんと応えてくれる辺り僕は自分に優しい幻聴を作り出しているらしかった。音達はその言葉を聞いて、音量を小さめに語りかけてくる。この表現ってきっとおかしいけれど、そう聞こえてくるんだから仕方ない。


ドォ
キィン


何を言っているのか、分からない。
でも何かを言っているのは分かる。
だから、僕は言った。今までずっと思っていたことを。


「ごめん。何を言ってるのか、僕には分からないよ」


キン
ダァン


「ねえ、君たちは誰なの?どうして僕にだけ聞こえるんだろうなあ…」


ボスン、と布団に寝っ転がれば辿るように高音がキンキンと話しかけてくる。それから低音が一拍おいて、ド、と短く音を打った。やっぱり、わからないものはわからない。しかも何をすればいいのか分からないから、そのままを受け入れるだけ。今のところ害はない。それだけ分かればひとまず充分なので、僕は目を閉じた。最初は眠れなかったのに、今では音が響いていても眠れるようになった。これもある意味成長なんだろうか。なんだろう。


キィイイ、イイィ……

ド、ド、ド、……



スゥ、と寝息を僕が呟くころ。
高音と低音が一層大きく響いて、声になっていた気がしたけれど気のせいの気もした。まあつまるところどちらでもよかった。







ピピピピ、携帯のアラームが鳴る。ああ朝だ。
ミュージックでもなければメロディでもなく、無機質な音の流れのそれを無意識下に止めようと僕は体を起こすまでもなく手を枕元に彷徨わせた。上手く見つからない。けれど目を開けることも億劫で、どこだったか、と寝起きの頭を精一杯回転させてふらふら探すものを見つけるべく手を動かす。そして、触れたもの。さらさらとした、柔らかいものに触れる。それと同時に止めてもいないアラームが鳴り止んで、僕は一瞬固まった。おや、と思って目を開ける。



「……?」


うっすら開けた視界に映る、金色。さらりとしたソレを撫でつければ、腰に回る暖かいものに引き寄せられて何かに埋まる。


「……起きたのか?」


埋まったものの上から聞こえる低い声。どうしよう。体は硬直したままで、僕は心臓がいやに高鳴るのをじっと聞いていた。不審者確認。なすすべなし。マウントポジションどころか拘束されて、どうしよう。昨日確かに鍵をかけて寝ていたはずなのに。


「ずるい」


叫び出すこともできなくて固まっていると、後ろからさらに腕のようなものが腰に巻き付いてきた。その後で耳元で聞こえる少々高い、声。


「ずるい、ずるい。俺だって帝人くん抱き寄せたい」
「るせぇな。最初に捕まえたのは俺だ」
「ずーるーい!俺の方が最初に帝人くんと一緒だったもん!!後から入ってきたの、デリ雄じゃん!」
「関係あるかよ。だァ、っせェな。少し黙っとけ」
「みーかーどーくーん!」


誰かに似た声と誰かに似た声。
考えたくもないし、目を開けたくもない。
ぎゅっと目を瞑って体を少し丸くすれば、前の方から引き寄せる力が強くなって、その声が機嫌良さそうに笑った。


「帝人は俺がいいんだそうだ」
「寒いだけでしょー!俺の方があったかいもんね!」
「てめェ、コートはせめて脱げよ」
「じゃあデリ雄もスーツ脱ぎなよ」
「俺はいい」
「じゃあ俺もいい」


後ろからも前からもぎゅうぎゅうに抱き締められて、正直息が苦しい。僕は観念して目を開けることにした。開けたくもなかったが。


「……え?」


そこにいたのは金色の髪、サングラスをかけないでマゼンタの色をした池袋最強さんが。お洒落なヘッドフォンまでつけちゃって。横になっている状態でヘッドフォンつけてて頭痛くならないのだろうか。


「えええええ、し、しずお、さ」
「いいや。俺は静雄じゃねェ。まあ静雄みてぇなもんだが。おはような、帝人」


静雄さんに似た静雄さんは口の端を上げて僕に挨拶をすると、鼻先に軽いリップ音といっしょに唇を落とす。昔の歌であった。その状態。思考回路はショート寸前。寸前ではない。ショート通り越して炎上だ。

「ちょっ、デリ雄やっぱ邪魔!」

後ろからの声にゆっくり振り返れば、臨也さんに似たピンクな人。
いつものモッズコート。ただし色は白。瞳の色はやはりマゼンタ。けれど臨也さんより、どうしてだろう何だか幼く見える。言動と行動の所為だろうか。それとも臨也さんらしくなく何か必死だからだろうか。


「いざや…さ…」

「違うよ。俺はね!サイケって言うの!帝人くん、いつも見てたよ!会話成立しないけど俺ちゃんと帝人くんの声聞いてたからね!」


にひゃっとはじけるように笑った臨也さんならぬサイケさんは狭い布団の中(今気づいた。僕の布団にでかいのが二人ほど入っている)で、僕に擦り寄って頬にキスをした。解説役誰かいないのかな。現状説明と現実逃避。どちらでもいい。お願いしたい。