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【APH】指先から広がる空間

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 ベラルーシは棚に手を伸ばし、列の中の左から二番目に位置していた小瓶を手に取る。握りこぶしで覆うことの出来るほど小さな瓶の中には鮮やかで、でもきつさの感じられないピンクの液体が真新しい状態で保存されていた。穏やかな桃色。それがいつも寒色系の服装を好む自分に似合うかなんて分からない。まるで自分とは対照的なその色合いに多少の違和感を覚えつつも、ベラルーシは小瓶を持ったままベッドの淵へと腰を下ろした。
 不思議そうな双眸がこちらを向く。見られていることが恥ずかしい、という感情はいつだって同じだ。好きな相手に見つめられ、高揚感を持たない女などいない。俯きがちにベラルーシは彼の手を取る。視線を交わす勇気を蓄える間にと、持っていたマニキュアをロシアへと渡した。
「ベラ?」
 不思議そうな声が鼓膜を刺激する。
 所詮自分は彼にとって妹でしかない。それ以下もそれ以上も望めやしない。それならば彼の優しさに漬け込む形になっても構わない。一方的でも良いから、今だけは自分を見ていて欲しい。ベラルーシはやっとの思いで深みのあるブルーを携えるロシアの瞳に、視線を合わせた。
「……兄さんに、塗って欲しい」
 まるで海のような色が、ベラルーシに笑いかける。対照的なマニキュアの瓶が、珍しく晴れた外の光に反射してキラキラと光沢を放っていた。