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息吹き×星々

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「銀河に比べて、スガタのすることが無いに等しい、『そんなことないよ。』って言ったんだ。」

スガタの足が吸い寄せられるように一歩踏み出した。

「銀河に比べてちっぽけだろう。僕だって、タクトだって、この戦いだって・・・。」

その声に確信はない。むしろ期待の色があった。

「ちっぽけじゃない。新しいステージへ飛び出したいと思う心。僕たちのしている戦いは、幾千の銀河にも比べられない。」

タクトに撃ち砕いてほしい。

「それにスガタはあらがえる人だ。だから似てるって思ったんだよ。」

つきまとう、生まれてきた不安を。

「この銀河の星と同じ、スタガは輝いてる。この島にいても、違う場所にいても。」

タクトの言いたいことが全部終わったと気付いた時、スガタは自分がタクトの瞳に吸い寄せられて、あまりに近づいていることに気がついた。
タクトの方は、伝えたかったことを伝え切るのに必死で、瞬く強い意志の瞳で未だスガタをまっすぐ見つめる。

魔法のようなロマンティックな言葉から、頭が冴えて行く中で、スガタの頭に数百の返答パターンが行き交った。
冴え渡る頭とは裏腹に、感じたことのない歓喜が胸を支配していくのがわかった。
目頭が熱くなる気がした。
輝く瞳でタクトが微笑んでいる。
「タクト・・・・。」





タクトは微動だにしなかった。
驚きで身動きが取れなかったのだ。
スガタがゆっくりと閉じた瞳を開けるのが、コマ送りの様に見えた。
その月光色の目が、見開いたタクトの瞳を確認するように覗くと、スガタはゆっくりと体を引いた。

「キス。した。」

即座にタクトが呟いた。
驚きすぎて理解できずにいるタクトに、スガタは若干バツが悪くなった。
「したよ。キス。」

少しだけ後ろめたくなって顔を逸らす。
「スガタが、僕に。キスした。」

そこで後ろめたさは羞恥心に変わった。
「したよ!僕はタクトにキスした。理解できた?」

言い捨ててスガタは早足に歩き出す。
「ちょっ!」
逆切れのごとく突然機嫌を損ねたスガタに、タクトは戸惑いを隠せない。
スガタ自身も困惑していた。
えも知れぬ感情が胸を支配した。
その感情をタクトに伝えたかった。
抱きしめたい衝動にかられたが唐突だと思った。
その欲求を殺すと、気付けば口づけていた。
(なんだそれ!!)
そんなのまったく自分らしくない、とスガタは思った。
赤面する顔をタクトに見せないために、早歩きでどんどん進んで行く。
タクトを置き去りにしても構わない。
さっきのことはなかったことにしてほしいと願った。

「ちょっと!スガタ!」
小走りでタクトが追いかけてくるのが分かった。
増々顔に熱をおびる。
お願いだから見ないでほしい。
その願いが通じたのか、タクトは少し後ろで距離を保ってついてくる。
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
しばらくの沈黙で、スガタはタクトが様子を伺っていると気付き、少しばかり速度を緩めた。
するとそれが話しかける許可だったようにタクトが言った。

「・・・・ファーストキス。なんだけど。」
タクトの囁くような控えめな声色に、スガタは背徳心が引き裂かれるような感覚を覚えた。
「今のはカウントされるよね・・・。」
恥じらうような、困ったような声。
タクトがどんな顔をしているのか、スガタには想像できた。
それは嫌悪でも軽蔑でもない。
ほっとして、スガタは少し振り向きながら言った。
「悪かったな、大事なファーストキスを奪って。」
その言い捨てるような言葉に、タクトはからかわれたと思った。
息を吸い込んで抗議を唱えようとした時、遮ってスガタは呟いた。

「僕も初めてだよ。」
タクトは何も言えなくなってしまった。
からかった訳じゃない、それだけを理解した。

(あれ?)
タクトは右手を胸にあてた。
胸の中でモヤモヤと、何かが渦巻いて広がった。
ソレは胸騒ぎのような、けれど期待のような。

(なんだろうこれ。)
ふと前を行くスガタに目を移す。
心臓が、ギュッと締め付けられた。
自然とため息が漏れる。



スガタ。なんで?

なんで僕にキスしたの?




「 幾億の息吹きたち、今世界が生まれ変わる 」
作品名:息吹き×星々 作家名:らむめ