二年後設定で沖神!
「突然、皇帝が屯所から姿を消したので、我々は捜していました」
「屯所には皇帝にやっていただかなければならない仕事がたくさんあります。早く、おもどりください」
「我々が護衛し、おつれします」
オイオイ、これは護衛ではなく連行だろう。
まるで犯人のようだ。
そう沖田は思った。
「ざまーみろアル!」
神楽の明るい声が聞こえてきた。愉快そうだ。
そちらのほうに沖田は眼をやる。
「オイ、馬車馬のように働かされてる恋人を助ける気はねェのか」
「ないアル」
きっぱりと神楽は言う。
「それに恋人じゃないアル」
神楽は右眼の下に指をやり、口から舌を出した。
アッカンベー、だ。
子供っぽい動作を楽しそうにしている。
あーあ、と沖田は思った。
こういうところ、嫌いではない。
いや。
それは素直ではない表現だ。
正しくは、つい眼が行く。
つまり、惹かれる、だ。
好きだということだ。
まったくもって、神聖真選組皇帝、ドSとして知られる自分らしくない。
だから、顔には出さないようにする。
「それでは、行きましょう」
右側にいる隊士が告げた。
沖田の腕をつかんでいる力が強まる。
不本意ではあるが、引っ張って行かれるように見えるのは真っ平なので、沖田は堂々と胸を張って歩きだす。
しばらくして。
「しっかり働くアル〜」
神楽のからかう声が背後から聞こえてきた。
けれども、沖田は振り返らずに歩き続ける。
屯所を抜けだしたのは、仕事が嫌なわけではなく、息抜きのつもりだった。
それが、たまたま、以前から眼をつけていた組織の尻尾をつかむ機会をもたらした。
それに。
会えた。
さて、屯所にもどったら、仕事の続きをがんばろうか。
少し明るい気分で、そう沖田は思った。