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しずおくんといざやくん【一緒にクッキング編】

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「シズちゃん、ちょっとそこのネギ取って」
「自分で取れ」
「ネギ取ってよ」
「自分で取れ」

臨也は静雄と二人、キッチンに立っていた。といっても、調理をしているのは臨也のみで、静雄はただ見ているだけだ。
役立たず、と臨也がぼそりと言うと、シンクの縁がミシミシと軋む音が聞こえた。そちらへ視線を送ると、シンクにはきれいに静雄の手形が残っている。シズちゃんの手形が残るなんて気分悪い、これは買い換えだなと臨也は小さく溜め息をつきながら、仕方なく自分でネギに手を伸ばした。

「………つーか、何で冬でもないのに鍋なんだよ」
「い、いいじゃん別に」

テーブルの上では電気鍋がコトコトと音を立て始めている。
こんな暑い時期に鍋とか意味わからねえ、とさらに突っ込んでくる静雄に、臨也はそれ偏見なんだけど、と適当に言葉を返した。

…全く、単細胞のくせに変なところ気にするんだから…

臨也としてはこの話題を深く掘り下げたくなかった。
うっかり口を滑らせて地雷を踏むのはごめんだ。別にこれは、先日どこかで開催された鍋パーティーに参加できなかったこととは全く関係ない。ただ単純に鍋が食べたいから決めたことなのに、シズちゃん馬鹿で俺が僻んでるとか勘違いするかもしれないから、もうこの話題は終わりにしたいんだよ。
カレンダー見ろ馬鹿、とまだ会話を続けようとする静雄を無視して、臨也はネギを切る作業に集中する。

「痛っ」
「…あ?」

包丁の扱いはそれなりに慣れているはずなのに、手が滑って指を切ってしまった。
断じて動揺したわけではない。このネギが滑りやすかった。ただそれだけだ。
臨也は心中で必死にそう言い訳をする。

「全くさあ、シズちゃんがうるさいから、気が散って指切っちゃったよ」
「何で俺のせいなんだよふざけんな」

いてててっと大袈裟に痛がる振りをすると、静雄は溜め息をつきながらも様子を見にやってきた。

「てめえの注意力の無さを人のせいにすんな」
「だからシズちゃんのせいで気が散ったんだって、嫁入り前の大事な体に傷がついたらどうしてくれんの」
「気色悪いこと言うんじゃねえよ、そんなん、舐めときゃ治るだろうが」
「はあ?舐めときゃって…」
「貸せ」
「え?」

静雄は血の滲んだ臨也の指を掴むと、それをそのまま、パクリとくわえた。
舌先で傷口を優しくなぞり、一旦離して傷口を観察してからまたくわえる。

「………………………」
「………たいしたことなさそうじゃねえか」
「………っわあああああああああああああっ!!」
「な、何だよ、そんなに痛いのかよ」

突然の出来事にしばし魂の抜け殻となってしまっていた臨也は、静雄の発した声で我にかえると、人生最大とも言えるほどの叫び声をあげた。

な、なんだ何が起きたんだ今、指を舐められた?誰に?誰に?ここにいるのは誰だ?シズちゃん?シズちゃんに?シズちゃんに舐められた?舐められっ…

「は、離してっ…っ離せえぇぇえぇぇぇぇぇ!!」
「ちょ、てめっ…おい、臨也!!……………何だアイツ」

臨也は静雄の体を思い切り突き飛ばして、猛スピードでキッチンを出ていく。
家が壊れるのではないかというほどの音をたてて閉められたトイレの扉をポカンと見つめながら、静雄はひとりキッチンに立ち尽くした。

一方、臨也はトイレに駆け込むと、扉を背にずるずるとへたり込んだ。変な動悸がする、心臓が痛いくらいに脈打って、苦しい。
そうだ、これはシズちゃんなんかに舐められるなんてあり得ないことが起きて最悪な気分だからだ、そうに違いない。俺は喧嘩以外でシズちゃんに触られると拒否反応が出るんだそれがこれだ、早く、早く洗わなくちゃ、早く…
そう考えながら改めて自分の指を見つめる。再び血の滲んだ指を見つめていると、先程のあの光景、感触が思い起こされて、臨也は痛みにも構わずにごしごしと指を服に擦り付けた。