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お年頃(菊視点)

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布団から身を起こして寝乱れた浴衣を直しながら、困ったものですねと菊は重苦しい溜息を吐き出す。
布団を畳んで押入れにしまい、枕元に用意してあった制服に袖を通し、登校の準備を始める。
友人の自分に 対する態度がおかしいと気がついたのはいつのことだろうか?
最初は何かの拍子に女性のようにエスコートされてからだと思う。
確かに自分は女顔で、それでからかわれた事も多く、またその類の悪趣味な冗談かと思ったが、友人のアーサーは皮肉屋ではあっても、誇り高い彼はそういう無礼な振る舞いは好まない。
立場上社交界に出ることも多い彼の事だから、いつもの習慣が出てしまったのだろうと思い、悪意もないようだったのですぐに流すことにした。
そこそこ付き合いも長くなってきたので、彼にその気がない事も、女性の好みも知っていたせいもある。
それに、少し毛先の遊ぶ髪は古色の金、意思の強さを思わせるはっきりとした眉、雪花石膏の白い肌、美しさと脆さを併せ持つエメラルドと同じ性質の緑の瞳。
女性に不自由しないその容姿で、なにも好き好んで男に走るとは思えなかった。

先日シャワールームでの事。
クラスが違うのでこれまで居合わせた事がなかったアーサーと、時間外にシャワーを使っていて出くわした事があった。
風呂場なので当たり前に全裸になりシャワーを使っていると、その様子にあっけにとられ体を拭くのも忘れて、濡れた髪から薄く筋肉のついた体に雫を滴らせながら赤くなるアーサーに、自分はまた何か失態をしたかと焦ったが、どうやら普段は肌を自分が堂々と裸になっているのに驚いたらしい。
やたら服を脱ぎたがる彼らは裸なんて見慣れているだろうし、なんでそんなに驚くのかしばらく真面目に悩んだものだ。
とはいえ、同性のこの体を直視すれば現実に戻って女性と同一視することもなくなるんじゃないかと内心ほっとした。
それにしても妙にその視線が絡みつくようだったのは気のせいだろうか?

そのうちアーサーがぼうっとする事が多くなった。
変に意識されて距離を置かれたり、逆にまるで何事もないといわんばかりに距離を詰められてみたり、元々不安定な情緒がグラグラしているのが傍目でもはっきり分かる。
傲岸不遜な彼が物憂げに溜息をついて、不安げに瞳を曇らせている姿を見ると、なんだか自分が悪い事をしているようで息が詰まった。

作品名:お年頃(菊視点) 作家名:あさなぎ