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お年頃(菊視点)

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今日もアーサーの教室を訪れ、頼まれていた生徒会の連絡事項を伝えに来ると、やっぱり彼は上の空で全然言ったことが耳に入っていない様子だった。
「どうしました?アーサーさん?」
流石に心配になって顔を覗き込むと、やっと気がついたようではっと顔を上げた。
まったく、しっかりしているようで放っておけない人だ。
そういえば最初の頃の印象とかなり違うなと昔の事を思い出す。
評判は最低。家名をいいことに非道を行う冷酷な生徒会長、その振る舞いが災いして生徒会内での孤立を招き、引きこもりから復帰したばかりの自分と手を組まなくてはならない羽目になった。
精々良いように利用されるのを覚悟していたら、意外と面倒見が良くて当時は色々と世話になったものだ。
正直、彼無しではとてもじゃないが今のように平穏な学園生活はおくれなかっただろう。
意地を張ってすぐ孤立するくせに、内心は寂しがりや。皮肉屋の癖にロマンチスト。口が悪くて負けず嫌いで、料理が苦手なのにすぐに人に振舞いたがる。
自分から問題を作っているような難儀な人だ。
日暮の日差しが教室の窓から差し込んでアーサーをやわらかく照らしていた。
普段は気がつかなかったが、髪より濃い色の長いまつげも日に透けると金色になるんだなと、ぼんやり眺めていたらアーサーの顔が近づいてきて、顔を合わせたのも忘れてもう一度挨拶のキスでも始める気だろうかと思ったら。
キスは真っ直ぐ唇にきた。
思考が止まった。
続いて舌が入ってきた。
頭の中が真白になった。
そのため情熱的なキスはアーサーの気がすむまで行われ…『何で抵抗しないんだよ!』という逆切れの声で我に返った。
何でと言われても、突然友人に濃厚なディープキスをされて思考停止して、…………さすが元ヤンというか、エロ大使というか、これが経験の差というものか。…キスが上手すぎて抵抗できなかったなんて、とてもじゃないが情けなさ過ぎて答えるられない。
なんで自分が責められなくてはならないのか分からないが、赤い顔でまくし立てるアーサーの勢いに押されて、その場しのぎに適当な言い訳を作った。
「いや…その…そちらの方は、人によっては家族でも口でキスをするって聞いたことがあるので…
そういうこともあるのかなと思いまして…」
当然ながら強烈なツッコミが入る。
「家族でディープキスなんてするかよ!!」
「……………やっぱり…そうなんですか?」
返答に困ってアーサーを見つめ返すと、またアーサーも返答に困ってもごもごと苦しい言い訳をする。
「なんだ…その悪ふざけだよ。
お前ほいほいなんでも言うこと聞いちまいそうだし、どこで止めるかな…と…思って
そうしたら、お前も特に止めないし、収拾がつかなくなったっていうか、その」
もうこれは流すしかないと菊が得意のごまかし笑いをすると、何故かアーサーもそれに乗っかってきて、訳も分からず笑いあい、突然ぷつりと笑いが止まり、お互い真っ赤になってだまりこんだ。
その間に沈みかけていた夕日はすっかり沈んでしまい、夜の気配が近くなっている。
「…………帰りましょうか?」
「…そうだな」
部屋の隅に置いてあった鞄をそれぞれ拾い、肩を並べて教室を出る。
ふと視線を感じて振り返ると、まだ赤い顔をしたアーサーの緑の瞳と視線があった。
「何か?」
「いや、なんでもない」
拗ねたように顔をそむけるアーサーは、どこかあどけなさがあって不覚にも可愛いと思ってしまった。
しかし、自分でも驚いたのは意外にもキスが嫌じゃなかった事で、押しに弱い自分ではあの調子でもう一度来られたら拒否できる自信がない。
……とはいえ、抱かせてくれと来られるのも困るが、もし万一『抱いてくれ』なんてこられた日には一体どうすればいいんですかね。
菊は俯くアーサーに気づかれないよう顔を背けて重いため息を一つついた。
作品名:お年頃(菊視点) 作家名:あさなぎ