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【遙か3】緩やかに通じ合う

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 ふわりと弁慶が笑う。それに合わせるかのような風が、吹いた。
「……え?」
「戦が終わらないのは何も望美さんだけのせいではありません。それに君一人が責任を感じることはない」
「でも」
「ここの風景も」
「え、?」
 弁慶が静かに立ち上がる。そして風景の一つ一つを丹念に眺めるようにぐるりと体をゆっくり回転させた後、先と同じように望美の方へと顔を向けた。木漏れ日のような視線が、降り注ぐ。
「ここの風景も一つで出来ている訳ではありません。鳥も川も草木も、一つ一つが持つ力は決して強いものではないでしょう?」
「……そう、でしょうか」
「この場所がこんなにも平安なのは、その一つ一つが積み重なっているから」
「……」
「僕は人も同じだと思いますよ。何もあなただけが全てを背負うことはないんです」
 きらきらと太陽の光に煌く弁慶の髪に、望美は瞳を細める。眩しい、と思ってしまう。彼の存在はこんなにも直線的で、こんなにも神々しい。神子だと賞賛されている自分なんかよりも、よっぽど彼の方が神仏に近いのではないか。そう思ってしまうくらいだった。
いつもそうだ。彼は自分の言動を頭ごなしに否定することなく、いつも優しく導いてくれる。彼の言葉一つ一つは言霊のように自分へ力を与えてくれている。胸いっぱいに広がる温かみ。望美はそれを味わうように自分の胸元へ手を宛がい、そっと眼を閉じた。
 その間も絶えずこの世界を作り出している暖かな音たちは自分の聴覚をそっと擽ってくる。
「同じですよ」
「え?」
 突然上がった弁慶の声に、望美は顔を上げた。それを待ち構えていたように、弁慶が笑みを象る。先程僅かな拍子に見せた、あの可笑しさを込み上げたようなそれ。どうしたんですか、と尋ねても誤魔化された彼の真意が、言の葉に乗って望美の耳へと届いた。
「『何を考えているんですか?』そう、僕は尋ねました」
「……はい」
「そして君は忘れてしまいそうだと言った」
「……」
「同じなんです」
「同じ?」
「僕も、君と一緒で。ここに来た刹那、思わず戦のことを忘れてしまいそうになりました。景色もそうですが」
 それは鳥や川や、風たちの奏でる音楽にまるで輪唱するように。今二人だけが存在するこの小さな世界だけでも、ここには確かに平安があると証明するかのように。