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表面張力

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恋人同士の二人が家でまったりデート。

今の臨也と帝人の状況を説明するとしたら、その言葉が相応しい。
では、その言葉に相応しい甘い空気が部屋に漂っているか、と問えばその答えはNOだ。

たとえ、恋人の一方が「好きだよ」と囁いている最中だったとしても、甘い空気は流れていない。
それどころか、好きという囁きを恋人である黒服を纏った青年にされた少年はげんなりしていた。隣に座って密着しているにもかかわらず目線はパソコンのモニターから動いていないくらいに。

「帝人君ひどーい。俺から好きって囁いてもらってそんなに嫌な顔をするのは帝人君くらいだよ」
言葉とは裏腹にひどく楽しそうに青年は少年に言った。
「その言葉からは、僕の他にも臨也さんが『好き』と囁いている人がいるみたいですね」
そうなんですか?と帝人はパソコンに向けていた目を臨也に向けて問う。
「うわぁ、帝人君。それって嫉妬?男の嫉妬はみっともないよ?」
うきうき、という言葉が似合うほど上機嫌な様子で青年は少年をからかう言葉をはく。
「嫉妬?そうですね。臨也さんが他の人に好きと言っているならば不愉快です。
そして、それをみっともないと臨也さんが嫌うならば別れるしかないですかね?」
残念です。と言いながら淡々と帝人は臨也に別れることを提案した。
それはもちろん本気ではなかった。大人気なくからかってきた年上の恋人に対する悪戯だ。
けれど、それに対する青年の対応はやはり大人気なかった。

「帝人君と別れるなんて、無理だよ。だって、俺は帝人君を愛しているんだから。それが事実である以上、絶対別れない。別れてなんかやらないからね。俺が帝人君を愛している限り」

ぞくり、と帝人は背中が冷える感覚を味わった。
帝人が言った「別れて下さい」が本気ではないと臨也も理解しているのだろう。
しかし、冗談で言った事すら少し後悔したくなるような臨也の言葉と声だった。
臨也の赤い瞳は帝人の瞳を真っ直ぐ射抜いていた。

それにしても、と帝人は思う。
さっきの臨也の言葉では、臨也の意志で別れることは出来ても帝人の意志では別れられない。
今のところは別れる気はさらさらないけれど、もし自分が臨也を愛さなくなったらどうなるのだろうかと口には出せないことを思考する。

「ねぇ、帝人君。何考えてるの?」

本当のことは言えないし、臨也さんには言えないことです。とも言えない。
しかし、臨也の問いただす目を見ると、きっと何を考えていたのかおおよその見当は付けて疑問を口にしたのだろう。

「ねぇ?俺には言えないこと?」

甘い声で臨也は囁く。
きっと大勢の女性(おそらく男性も)を誑かしてきたのだろう声を臨也は出した。

「ねぇ?帝人君?」

ねぇ、ねぇ。と連呼する黒服はいい声で恋人に考えていたことを話すように促す。
「言いません」
帝人は臨也の声を打ち切るように冷めた声で言い切った。
「あーあ。帝人君は冷たいなぁ、俺はこんなにこんなに帝人君のことを愛してるっていうのに」
臨也は声を通常のものに戻して、拗ねたような態度をとった。
ああ、この人本当に面倒くさいな、と少年は少し呆れた。

「臨也さんは軽く僕のこと愛してるって言いすぎですよ」

溜息を吐きながら少年は青年に言う。
それを聞いた青年は納得いかない、という素振りで文句をつけた。
「心外だなぁ。俺はいつだって真剣に愛してるって言ってるよ?軽く、だなんてそんなわけないじゃない。帝人君は俺の愛を甘く見てるんじゃない?俺の愛は人間全てを愛せるくらいの大きい愛なんだよ?そして、今やその大きな大きな愛は帝人君への愛で大部分を占められている」

ねぇ、わかってる?俺がどんなに帝人君を愛しているのか。
耳に唇を触れるくらい、吐息が耳にかかるくらいの近さで青年は言葉を締め括った。
吐息を感じて少年は少し体が震えた。それが少し悔しくて、悟られたくなくてまた溜息を吐いた。
どうせ一連の動作なんてバレているのだろうけれど。

「それに、一応俺だって帝人君に愛してるって言うの我慢してるんだよ?」

青年の言葉に少年は一瞬耳を疑って目を丸くした。
しかし、すぐに冷静に戻ることが出来た。あまりにも帝人が思う臨也の行動とかけ離れていたからだ。
「ああ、冗談ですか」
その言葉に今度は青年の方がきょとん、と目を丸くした。
「あはははは。さすが帝人君。俺の言葉をそう取るのか」
「え?冗談に決まってますよね?」
他に何があるんですか?と疑いのない目で帝人は臨也に問う。


「何言ってるの帝人君。冗談なんかじゃないよ。俺が帝人君を愛してるって思ってそのまま口に出していたとしたら、帝人君は寝ることさえままならないよ?五月蝿くてしょうがないよ。きっと鬱陶しいよ。そう帝人君に思われるのが嫌で俺は我慢して我慢して、それで我慢できなくなったら帝人君に伝えてるんだよ。俺が帝人君を好きだって叫びたいのはいつもなんだよ。それはもう、呼吸をするのと同じくらい。嫌だろう?毎日毎日会ったらずーっと好きだ愛してるって言われるの。だから我慢しているんだ。」

我慢しなくていいですよ、とは言いたくないし、我慢してくれてありがとうございますというのも何か違う気がする。
なんと返事をしたらいいものかと帝人は思う。
そして、自分は今変な顔をしているのだろうな、とも思う。
そんな自分にお構いなしに臨也は話を続ける。
こんなに好きとか愛してるとか言ってるくせにこっちの都合はお構いなしなのがこの人なんだよなぁ、と少し感心する。

「そうだなぁ、俺が帝人君への言葉を我慢するのは表面張力みたいかな」

作品名:表面張力 作家名:彼方