もつれた糸
幼い頃は、相手と切磋琢磨を繰り返しながら、お互い強くなれると信じていた。
その願いが叶えられないと知った日の絶望は、今もハンガリーの胸を暗く淀ませながら締め付ける。
男と女、そんな性別の違いによって、お互いの間にあった信頼や絆が途切れてしまうと思ったハンガリーの鬱々とした心を
晴らしてくれたのは紛れもなく、いま目の前にいるプロイセンだった。
今こうして憎まれ口を叩き合うことができるのも、周囲からは横暴だとかがさつだとか、散々言われているプロイセンの、
凡そ性に似合わない気遣いがあってこそのことなのだと、ハンガリーは思っている。
それを口に出して言えないのは、もつれた糸のせい。
ハンガリーの、亜麻色の長い髪が風に揺らめくのを、指で絡め取りたい劣情を堪えながらプロイセンが見ているように、ハンガリーもまた、
プロイセンの銀糸のように陽の光を弾く髪を、指先で感じたい欲求を抑えながら見ていた。
これから先、何が起こるかわからない。
けれども、二人の小指と小指に繋がれた、このもつれた糸が解ける日がくるのをお互い、密やかに祈りながら待っている。