恋においては敵いません
「あー………寒い」
「寒いですねぇ」
冷たい風が頬を掠め、吐く息が白に色を変える
本格的な冬の訪れに、臨也は心底嫌そうに眉をしかめながら街中を歩いていた
そんな臨也の隣で、片手にスーパーのビニール袋を下げた帝人がちょこんと肩を並べている
歩く度にがさがさと音を立てるその中に入っているのは、葱や白菜といった野菜に肉といった食材
勿論臨也も同じビニール袋を下げている
あの折原臨也とスーパーのビニール袋という不可思議な組み合わせに、可愛い恋人に噴き出されたのはもう数分前の話だ
「ほんと、なんで日本には四季とか面倒なのがあるわけ…いらなくない?」
「そんなこと言って…情緒もなにもないですね」
「なくて結構…てか俺みたいな奴に情緒とか期待する方が間違い」
それもそうですね、と小さく笑う帝人に臨也は溜め息を吐く
早く部屋に着きたい、とかそんなことを考えていると、「でも、」と帝人が小さく漏らした
「でも僕はわりと好きですよ、冬」
「えー…なんで?」
「夕御飯を迷わずにすみますし、鍋って便利ですよね」
「……毎日は流石に飽きない?」
「最近は色々と鍋にもバリエーションがあるのでそうでも。あ、あと………」
一旦言葉を止めた子供を、臨也は足を止め不思議そうに眼を瞬かせる
帝人は少しだけ顔に朱を走らせると、青みがかった双眸を臨也に向けてふにゃりと笑った
「その……冬だと、臨也さんに素直に甘えられるから、好きです」
へへ、と幼いそれで笑うと、帝人は臨也の数歩先へと駆けて行く
臨也はぽかんとした表情でその身体を眼で追ったが、すぐにふっと口元に柔らかい笑みを浮かべた
(本当…敵わないなぁ)
あまりにも君は優しくて綺麗すぎるから、こんな俺が触れていいのか迷ってしまうけど
でも君が、こんな俺を愛してくれると言うのなら、俺は
(君を、精一杯愛したいよ)
「ほ、ほら早く帰りましょう!」
「……はいはい」
一瞬だけ振り向いて口早にそう呟くと、帝人はとたとたと駆け出す
そんな彼の後姿を酷く優しい眼差しで見つめると、臨也はこんな日常を愛しく思いながら再び歩き出した
「寒いですねぇ」
冷たい風が頬を掠め、吐く息が白に色を変える
本格的な冬の訪れに、臨也は心底嫌そうに眉をしかめながら街中を歩いていた
そんな臨也の隣で、片手にスーパーのビニール袋を下げた帝人がちょこんと肩を並べている
歩く度にがさがさと音を立てるその中に入っているのは、葱や白菜といった野菜に肉といった食材
勿論臨也も同じビニール袋を下げている
あの折原臨也とスーパーのビニール袋という不可思議な組み合わせに、可愛い恋人に噴き出されたのはもう数分前の話だ
「ほんと、なんで日本には四季とか面倒なのがあるわけ…いらなくない?」
「そんなこと言って…情緒もなにもないですね」
「なくて結構…てか俺みたいな奴に情緒とか期待する方が間違い」
それもそうですね、と小さく笑う帝人に臨也は溜め息を吐く
早く部屋に着きたい、とかそんなことを考えていると、「でも、」と帝人が小さく漏らした
「でも僕はわりと好きですよ、冬」
「えー…なんで?」
「夕御飯を迷わずにすみますし、鍋って便利ですよね」
「……毎日は流石に飽きない?」
「最近は色々と鍋にもバリエーションがあるのでそうでも。あ、あと………」
一旦言葉を止めた子供を、臨也は足を止め不思議そうに眼を瞬かせる
帝人は少しだけ顔に朱を走らせると、青みがかった双眸を臨也に向けてふにゃりと笑った
「その……冬だと、臨也さんに素直に甘えられるから、好きです」
へへ、と幼いそれで笑うと、帝人は臨也の数歩先へと駆けて行く
臨也はぽかんとした表情でその身体を眼で追ったが、すぐにふっと口元に柔らかい笑みを浮かべた
(本当…敵わないなぁ)
あまりにも君は優しくて綺麗すぎるから、こんな俺が触れていいのか迷ってしまうけど
でも君が、こんな俺を愛してくれると言うのなら、俺は
(君を、精一杯愛したいよ)
「ほ、ほら早く帰りましょう!」
「……はいはい」
一瞬だけ振り向いて口早にそう呟くと、帝人はとたとたと駆け出す
そんな彼の後姿を酷く優しい眼差しで見つめると、臨也はこんな日常を愛しく思いながら再び歩き出した
作品名:恋においては敵いません 作家名:朱紅(氷刹)