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【ヘタリア】 兄さんの子守唄 後編

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「兄さんの子守唄」後編


ギルベルトはベルリン市内を馬で駆け抜けていく。
広場の方から発砲音が響いている。
市内のあちこちで、プロイセン正規軍と市民軍の銃撃戦が起こっている。

(くそ!何をやってるんだ!!軍が市民を殺してどうする!!そんなことをしたら、この暴動は治まらねえ!!フランスやオーストリアの二の舞だろうが!!)

正規軍の将校の制服を着たギルベルトに、市民軍が発砲してくる。
その銃弾をかいくぐりながら、王宮へとひた走る。

ギルベルトの鋭い目は、徒歩で移動する市民軍の数と武器の量を、馬上から計る。
一般の市民はこの暴動の経過を見守っているようだ。

(この小競り合いを長引かせたら、やばいな・・・。)

ひゅうん、とギルベルトの耳元を銃弾がかすめる。
そんなことを気にも留めずに、ギルベルトは馬を走らせた。

王宮の固く閉ざされた門の中には、何十人という軍人が集結している。
ギルベルトの姿を見ると、彼らはほっとしたように、門を開けた。

「国家殿!!国王陛下がお待ちです!!」

「わかった!いいか、市民には発砲するな!絶対だぞ!」

それだけ言うと、ギルベルトは広い王宮の前庭を馬で駆け抜ける。
馬に乗ったまま、広間の中へと駆け込んだ。

国王の側近や軍の司令官たちが駆け寄ってくる。

「国家どの!」

ギルベルトは馬から飛び降りると、将校たちを怒鳴りつける。

「誰が、発砲許可を出しやがった!あちこちで銃撃戦だ!
早く軍を撤退させろ!市民軍は大した数じゃねえ!!他の市民に飛び火させるな!」
「し、しかし・・・市民は暴徒と化して・・・。」
「誰が暴徒だ!!ありゃあ、ただの雑魚の集まりだ!!それよりも、一般市民に被害が出てみろ!本物の暴動になっちまうぞ!すぐに軍を撤退させろ!!」
「し、しかし、・・・。」
「しかしも、くそもねえ!!あいつらはたいした数じゃねえ!軍が引けばすぐにここに押し掛けてきてくる。代表者を出させて要求を聞いてやるんだ!」

「そのような事・・・!!奴らをつけあがらせるだけで・・!」

「暴動が各地に飛び火したらどうなる?自由主義者どもの扇動に市民が乗っちまったら、ベルリン市内は血の海になるぞ!」

その時、広間の奥から国王フリードリッヒ・ヴィルヘルム4世が姿を現した。

「わかっておるよ。プロイセン。市民には発砲しない。そなたの言うとおり、軍も市内から撤退させる。」

「おう!国王陛下!話が早え!」

「ただちに、軍を市内から撤退させよ!」
「しかし、国王陛下!!王宮を守る兵を・・・」

「誰が、王宮から軍を撤退させろつったよ!今、市内でドンパチやってる軍だけ、市民軍に見えるように撤退さえろっつってんだ!!国王は、話しあいの姿勢を見せたってだけで収まんだよ!!さっさと行け!」

それでも動かない将校たちに国王が言う。
「国家殿の言うとおりではないのかね?早く撤退命令を出したまえ。彼らの話を聞いてやればこの暴動などすぐに収まる。」

「しかし・・・陛下!」
「要求を聞くかどうかなぞ、まず彼らの人数と組織を、完全に押さえてしまってからで良いのではないかね?なあ、国家殿。」

「おっしゃる通りで!」

ギルベルトがおおげさに国王にお辞儀をする。
茫然としている将校たちをギルベルトが怒鳴りつける。

「さあ!行きやがれ!なるべく派手に、わかりやすく撤退しろよ!」


将校たちはクモの子を散らすように、各部署に伝令にいった。

広間に残ったのは、ギルベルトと国王と側近たち。

「ほんっと、お前、頭の回転速くて助かるぜ!!」

「わが国家殿にいろいろと教わりましたからなあ・・・。
しかし、奴らの要求なぞ、私は聞く気はないぞ!プロイセン。」

「わあってるよ!市内を見てきたが、暴れてる自由主義者どもはそれほど人数はいねえ。だがよお、不満分子ってえのはどこにでもいるからよ。」

「いまいましい連中だ!!あくまでも、憲法の制定に固執して・・・。」

「・・・・どうなんだよ。お前の考えはよ。まだ、憲法には反対か?」

「受け入れがたい。断固として拒否する!と言いたいところだが・・。」

「だが・・?」

「父上が約束してしまわれたからな。制定を引き延ばすのももう限界かもしれない。」

「あの、くっそ野郎めが!!お前は良く出来てるよな・・・あいつの息子だってのに・・・!」

「それはほめられているのか、けなされているのか・・・・。」

「ほめてんだよ!お前がちっと、もったいぶって、崇高な演説たれてやれば、暴徒どもなんて涙流して喜ぶぜ!」

「ふん・・・・ではそうしようかな・・。」

「国王陛下!!とんでもございません!!」

側近が大慌てで叫んだ。

「冗談だよ。なあ、プロイセン。」
「けせせ・・・・いいなあ!お前が国王で!!やりやすくって涙がでるぜ!」
「そうだ。プロイセン。・・・ヴィルが・・・その・・・・・また軍隊に口をだしてな・・・・・。」「あ?!あいつ・・・また出てったのか!!」

あいつとは、国王の弟のヴィルヘルム・フリードリヒ王子の事だ。

「なあ・・・ひょっとして市民に発砲したの、ヴィルの指示か・・・!」
「たぶん・・・・・すまない・・・!」
「お前が謝んなよ!あいつも血の気が多いからな・・・・・。まあ、軍が引けばおさまるだろ。そのあとだな、問題は。自由主義者どもをどうするか・・・」
「そちらはこっちにまかせてくれ。プロイセン。」

国王とギルベルトはお互いに顔を見て、にやりとした。

頭に血ののぼった自由主義者など、弁舌にたけた国王の敵ではない。
のらりくらりとかわされ、もったいぶって憲法を受諾したように見せかけることなどなんでもない。問題は、憲法を「誰が」、「どうやって」、発布するかなのだ。

「まあ、まかせるわ。憲法についても、お前の考えがあるんだろ。お前が国王だ。俺はそれに従うぜ!!」
「ふふ、心にもないことを!」
「おいおい、俺の忠誠はいつでも国王陛下にあるぜ!」
「ふふん!・・まあいい。それにしても、どうするかね・・・・あの弟は・・。」
「うう、そっちもまかせる!!なんであんなに攻撃的なんだろうなあ。お前の弟だってのに・・・・・ほんとにお前の家の男はわからねえ!むやみに優しかったり、攻撃的すぎたり・・。」
「かの大王だとて、そうであろう?我が血のなせる技か!神のみぞ知る!」
「へっ!んじゃあ、俺は市内の軍をみてくるわ。そろそろルッツも心配だしな。」

「ああ、そのことだが、プロイセン。」
「なんだ?」
「えーと・・ルート・・?ヴィッヒ殿・・・・そなたが「ドイツ」という者だが・・・・この王宮にきてもらってはどうかね?そなたのいない間、軍の駐屯地にいる、というのは、どうも良くないと思うが・・・・。オーストリアが手ぐすね引いて「ドイツ」の名を欲しがっている今、プロイセンが冠する「ドイツ」こそが真の「ドイツ」ということを内外に知らしめておいたほうが得策かと思うが・・・。」