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【ヘタリア】 兄さんの子守唄 後編

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「・・・・・うーん・・・なんかよお・・・・お前を信じてないわけじゃねえぜ。ただ、ルッツはなあ、俺の手元で育てたいと思ったんだ・・・・。あいつが王宮で皆に下賜づかれて、王子さまみてえに暮らすよりも、軍の中にいて、「国」を守るって事がよお・・・。どういうことなのかわからせたい・・・・っていうか・・・・・。」

「そなたの気持ちはわかるが・・・・。危険ではないかね?こうやって暴動など起きた時に、この王宮にいたほうが、少しは安全かと思うが・・・・。実はなあ・・・・妃がルートヴィッヒ殿に部屋を用意してな・・・・。まあ、妃には子供がいないので・・・・。「国」であるルートヴィッヒ殿の面倒を見たいと言っておって・・・。」

ギルベルトは笑ってしまう。
前の王妃ルイーゼといい、どうして女ってのは子供を手元に置いておきたがるのか・・・・。
執事のシュタインが言っていた王宮での動きってのはこういうことか・・・・。

「あのよお・・・・ありがたいけどよ・・。なんせ、俺らは「国」だからよ・・・。
まあ、普通の人間とは違うわけで・・・。その辺、お前やヴィルは俺とずっと暮らしてたからわかってるだろうが、王妃はなあ・・・・。いつまでも大きくならない「子供」をそばで見てて、どう思うかね?」

「まあ・・・・難しいことだ、とはわかっているよ。
しかし・・・・・・・覚えていてくれ。私としては、我が「国」はそなただけと思っているからな・・・・プロイセン。」

「ああ、「統一ドイツ」はすべてのゲルマンの上に建てる!
当分、俺は「国」=プロイセンをやってるよ!お前が嫌がってもなあ!」

「私がそなたを嫌がったことなどあるかね?」

けせせとギルベルトが笑う。

今の国王も、弟のヴィルヘルムも、ナポレオン軍に王宮が攻め入られたとき、ギルベルトが王妃とともに、馬小屋に隠し、秘かにケーニヒスベルクへと逃がしたのだった。
そして、ナポレオンに向かっていき、王子たちを守ったのもギルベルトだった。
そのせいか、今の国王兄弟は、ギルベルトに絶大な信頼をおいている。


「お前たちは、あのフリッツの子孫だからな・・・・。俺は絶対にお前らを守るぜ!」

「なら、私たちにも、そなたの弟を守らせてくれ。「ドイツ」殿なら、なおさら大事にしなくてはな。」

「まあ、考えとくよ。そうだ、ルッツの部屋、用意すんなら、俺のも用意しといてくれよ!!
今の屋敷は、風呂が寒くてなんねえ!」

「そなたも来てくれるなら、王宮の私の部屋を譲ろう。プロイセン。」

「んなっ!!そっ、そんな馬鹿なことしたら、俺が貴族たちにつるされっちまうだろ!!」

「なに、冗談だよ!」

「・・・・・お前のは、冗談かなんだか、わかんねえんだよ!!」

ギルベルトは笑いながら国王と別れた。

広間を抜けて宮殿の前庭に出る。

馬に乗って軍の駐屯所に戻ろうとした時、ふと、弟の声がした気がした。

「ルッツ・・・?」

胸が騒ぐ。何か嫌な予感がした。
「ちっ!」

予感がはずれることを祈って、ギルベルトは馬を駆けさせた。

(ちっくしょう!ますます嫌な感じがするぜ!ルッツ!無事でいろよ!!)


****************



ルートヴィッヒの前に、突き飛ばされた執事のシュタインが転がってきた。

目の前には、プロイセン正規軍の制服を着た将校らしき3人。
後ろで、護衛の兵を縛り上げているのが2人。

(全部で5人・・・・・逃げ切れるかどうか・・・。)

将校の小銃は自分と、自分のほうを向いて起き上がろうとしているシュタインに向けられている。


≪この餓鬼だろ?ヘルトリング。≫


窓まで4歩。
自分ひとりなら逃げられる。
しかし、シュタインをおいてはいけない。
シュタインは将校たちに後ろを向けて、立ち上がろうとしている。


≪ああ、そうだ。こいつが「ドイツ」だ。≫


シュタインの口が音もなく動く。

(窓からとびおります)

≪わがプロイセンに「ドイツ」などいらん!≫

ルートヴィッヒはかすかにうなずいて、持っていたサーベルを将校達にわからぬように向きをかえる。

≪さあ、一緒に来てもらおうか!「ドイツ」さんよ!≫


次の瞬間、ルートヴィッヒとシュタインは、同時に二人の将校に向かってサーベルと剣を投げた。

「ぎゃあ!」「うわ!!」

二人の将校がもんどりかえる。

「き、きさまっ!」

残った将校の銃が放たれる。

シュタインの服の端がパシっとちぎれる。
執事は走りながら、ルートヴィッヒをつかむと、窓を蹴破り外へと飛びだす。
カーテンは飛んだ二人の勢いにまかせて無残にちぎれ、ガシャン、と窓ガラスが粉々に飛び散った。
その後から銃弾がかすめていく。

すぐに、護衛兵を縛っていた残りの二人が駆け寄って仲間に手を貸している。

残った将校は狂ったように発砲してくる。

シュタインはルートヴィッヒを抱えながら、窓の階下のバルコニーに飛び降りた。
ガラスの雨は分厚いカーテンが幾分守ってくれる。
それでもシュタインの体とルートヴィッヒの顔にはいくつもの切り傷が出来て、血が噴き出す。

「ルートヴィッヒ様!つかまって!」
「はい!」

シュタインはルートヴィッヒを抱えると、バルコニーから階下のバルコニーへと飛び移って行く。
その後ろから、追いかけてくる将校の銃弾が何度も放たれる。

「くっ!」

一つの銃弾がシュタインの腕をかすめた。

ルートヴィッヒを抱いていた腕の力が緩む。

「シュタイン!下ろして!自分で飛べる!」

「・・・・。」

緩んだシュタインの腕からむりやり滑り降りると、ルートヴィッヒの目は広場に止められた馬を見つける。

「シュタイン!!馬だ!!」
「はい!!」

二人は、広場につながるバルコニーから飛び降りると、つながれた馬へと走る。

その間にも銃弾が降ってくる。

屋敷の中から大声が聞こえてくる。
将校達の仲間が階段を駆け下りてきているのだろう。

「ルートヴィッヒ様!行ってください!私はここで食いとめます!」
「だめ!!一緒にきて!でないと、逃げない!」

ル―トヴィッヒは、シュタインの傷ついてない方の腕を引っ張り走る。
シュタインは一度、躊躇したが、すぐに馬の方へ向かう。
馬の引き綱をとめてある柵からはずし、二人は馬に飛び乗った。

階下に降りた将校達が走り寄ってくる。
駐屯所の門にはバリケードが作られている。
それを、馬で飛び越して、街の中へと走る。

(早く!!兄さんに!!)

ルートヴィッヒの後ろにはシュタインが乗っているが、ふと見ると腕からの出血がひどい。

「シュタイン!!手綱を持って!」

うむを言わせずシュタインに馬の手綱を押しつけると、ルートヴィッヒは馬の背に足を乗せ、くるりと向きを変える。両腕の袖を引きちぎってつなぐ。
「腕出して!」
ルートヴィッヒは馬上でシュタインの腕に引きちぎったシャツの袖をまいていく。

(早く、ちゃんと手当てしないと・・・!)

「ルートヴィッヒ様!!追手です!」

シュタイン越しに後ろを見ると馬で追って来る将校が3名。

そのうち一人は、手に怪我をしているのが見えた。
ルートヴィッヒがサーベルを投げつけた相手だ。