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和(ちか)
和(ちか)
novelistID. 11194
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争奪戦

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「お兄さん達が菊ちゃんをからかおうとしたこと怒ってる?」
「あー……まぁ、そうですねぇ」
「いやさぁ、普通に道案内するんじゃ全然印象に残らないからちょっと奇抜な方法でって思ってね?」
「……あ」

言われて辺りを見回してみれば確かに目的地のお店が見える。 どうやら気づかぬ間にキャリーバッグを餌に誘導されていたらしい。
心配しなくても顔で十分印象に残ったから素直に案内してくれれば良かったのに。
お礼を言うべきなのか怒った方が良いのか反応に悩んでまだ話している二人を見て、唖然とした。
アントーニョさんがギルベルトさんの腹部に恐らく本気ではないものの、打撃を加えていたからである。

「え?」
「あっ」

サッと目を大きな手で覆われた。
意外と指は細いなと思いながら動かないでいると、暫くして手が退かされた。
アントーニョさんがいつの間にか近くに立ち、しょんぼりとした顔をしてこちらを見ている。

「騙してごめんな、ちょっと驚かしたかっただけやってん……」

ご機嫌を窺う子犬の様に自分より大きな身体を縮めて上目遣いで見られ、怒りはすっかり萎えてしまった。
仕方なく溜息を吐いて首を振る。

「怒ってないですけど、普通に案内してほしかったです。
 私、本当に心臓が止まるくらい驚いたんですからね!」
「うん、ごめんな」
「悪かった……」
「ありがと、驚かせちゃってごめんね」

三者三様の謝罪の言葉と共に頭を下げられ、許しますと言って頭を撫でると吃驚した顔をされた。
そして突然ぎゅっとアントーニョさんに抱きしめられる。

「えへへ、許してもらえてめっちゃ嬉しいー!」
「ちょっとアントン、抜け駆けはずるいんじゃないの?」
「わぁっ」

今度はそう言ったフランシスさんに奪い取る様に引き寄せられてどんと顔から胸に体当たりしてしまった。
痛む鼻を擦りたくてもぐいぐいと身体を押し付けられ腕で締め付けられて身動きが取れず諦めて力を抜くと、また腕を引かれてアントーニョさんの胸に背中から飛び込む。
後頭部をぶつけて呻く私の肩を掴んでフランシスさんが強引に抱き寄せようとするのを絡みついた腕が力尽くで阻止していた。
状況の意味が分からない上に肩も腕に圧迫されているお腹も後頭部も鼻も痛くて泣きそうになる。

「おっ、おい! 止めてやれよ、そいつ泣きそうだぞ」

そう言われてやっと気づいたらしい二人が奪い合う力を弱めたので、ギルベルトさんの後ろに隠れた。 意外にもこの青年が三人の中で一番常識人らしいと判断したからだ。
前に立つギルベルトさんはうろたえていたが見捨ようとする素振りは無く、二人から私の身を庇うようにそこに立っていた。

「なんやの、邪魔やねんけど……退けや」

唇を尖らせたアントーニョさんが顔に似合わない低い声を出したのに驚いて飛び上がる。

「お、落ち着けって……恐がってるだろ……!」
「だってさぁ、さっきからアントンが菊ちゃんのこと独り占めしようとするんだもん」
「俺が最初に声掛けたんやもん、だから俺のやんか」
「はぁ? 菊ちゃんのこと最初に見つけたのはお兄さんなんですけどー?」

ギルベルトさんを突き飛ばして私の肩を掴み睨みあう二人に疲れてきて、呆れたように溜息を吐いたギルベルトさんと顔を合わせた。
ふとそのポケットからはみ出す携帯を見て、旅先で友人を作ると言うのも良いなと不意に思う。
日本に帰れば離れ離れになってしまうが、今はメールや電話で幾らでも連絡を取れるしお薦めの場所を教えてもらったりも出来るだろうし。
鞄に入れていた携帯を出してギルベルトさんの方に差し出した。

「携帯アドレス、交換しませんか?」
「あ? まぁ、良いけどよ……」
「じゃあ赤外線で送りますね」

フランシスさんとアントーニョさんのことを無視して赤外線通信をしていると、それに気づいたらしい二人が携帯を差し出してきた。

「ギルばっかズルイやんか! キャリー盗んだくせに!」
「お前等がしようって言ったんじゃねぇか!」
「ねぇねぇ菊ちゃん、俺とも交換しようよ」
「えー」

言いながらも携帯を差し出すと、ぱっとフランシスさんが嬉しそうな顔をして携帯を差し出す。
しかし彼がプロフィールを送ろうとするのをさり気無く邪魔しながらアントーニョさんも携帯を差し出してきた。
本当に面倒臭いなこの人たち。 何をこんなに張り合ってるんだ。
溜息を吐きながらも通信を終えて、今度はしっかりとキャリーバッグを持ってからお礼を言って歩き出そうとするとガシっと手を掴まれた。

「菊ちゃん、これからお昼? だったら一緒に食べようよ」
「フランうっさい! 菊は俺と二人で食べるんや!」
「お前等さぁ……」

嫌な予感を感じてがっくりと額を押さえた。 もしかして私はここに居る間中ずっと付き纏われるんだろうか。
美形に囲まれることに悪い気はしないがこの人たち、面倒臭すぎる。
疲れきった溜息を吐いた私の方をギルベルトさんがぽんと叩いて、二人に手を払われた。
これから先、私は一体どうなってしまうんだろうか。
作品名:争奪戦 作家名:和(ちか)