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万華鏡をのぞいても面白くない

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 目も鼻も耳も口も、腕も手首も足元も爪も何もかも。何もかもが気に食わない。何一つにだって触れたいと思わない。それなのにフランスときたら、少しの抵抗もせずに、ただまっすぐと、剥き出しの手首を差し出してくるのだ。

「じゃあお前は俺の何が欲しいのさ」

 フランスの手首から止まることの知らない血液の濁流は、やがて手袋のように彼の手を覆いつくした。林檎よりも薔薇よりもいつか寝返りを打った女の唇よりも、しつこいくらいに赤い手の平が不意にイギリスの頭の上に置かれる。頭部を包んだ懐かしい重みが、ずっと昔に置き捨てた記憶に息を吹き込み、願ってもいないのに、化石になった思い出をフラッシュバックさせた。
 血濡れたこの手が温かい理由がわからない。浅はかな脳に嫌気がさし、嗅覚共々死んでしまえばいいと、イギリスは握りしめていたナイフを自らに向けた。