二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

どう転ぶかわからないから恋は面白い

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 

「あーっと・・・・竜ヶ崎、だっけ?」
「竜ヶ峰です」
この時、ああこの人僕みたいな人間には興味なんて無いんだなぁとちょっとだけ傷付いて、でも自分の凡人さはよくわかっていたので諦めと許容でこんなもんだろと納得してから一週間後。


「好きだ、付き合ってくれ」


名前を間違えてくださりやがった池袋最強に告白されました。
(日本語がおかしい?そんなん知るか!)










「そ、それでどう返事したんだ・・・?!」
「もちろんNOに決まってるじゃないか」
「の、ノー!!?」
大げさなリアクションを取る幼馴染を尻目に、帝人は苺牛乳をずこーっと吸い上げる。その横では杏里がお弁当をもそもそと食べていた。
「あの平和島静雄にNOと言えるなんてチャレンジャーというか無謀というか・・・・よく無事だったなぁ」
「きちんと断るのが礼儀でしょ」
「脅されたとかは無かったんですね」
「うん。まあ、そんなことする人じゃないよ、平和島さんは」
キレやすく馬鹿力だが、基本は常識人で優しいのだとセルティから聞いていた。それもあくまで聞いていた、だが。
「大丈夫なら、それでいいけどさ・・・」
僅かに眉を顰めた正臣と心配げにこちらを見る杏里に、帝人はちょっとだけ困ったように笑って「大丈夫だよ」と言った。何が大丈夫なのか自分でもよくわからなかったけど。











やっぱり大丈夫じゃないかも。
「竜ヶ峰」
今日も今日とて忠犬よろしく、アパートの前で池袋最強が待っていた。その姿に一歩間違えればストーカーだとため息を吐きたくなる。というかそれに片足突っ込んでいる絶対。
「・・・平和島さん、何度来られようと返事は変わりません」
「好きだ。付き合ってくれ」
聞いてねぇ。帝人はひくりと口元を引きつらせた。
「・・・・・・・無理です」
「そうか」
静雄は頷いた。もちろんそれだけである。
帝人は、正臣達に告白されたと報告したが、厳密に言うとそれはちょっと違っていて、告白をされたはされたのだが、正しく言うと告白『されている』。つまりは現在進行形なのだ。
(けどなぁ)
何度となく繰り返したやり取り。帝人の拒絶の言葉を聞いて、彼はいつも大人しくその場を去る。もしかして池袋最強ってマゾ?とか思ってしまう帝人は多分悪くない。それぐらい、意味の無い、行為だと思うのだ。だって、今のところ帝人には彼の愛を受け入れる予定など無いのだから。
それとも、何かの言葉遊びだろうか。都会ではこれが流行りなのかと、ネットは使うが所詮流行モノには疎い帝人は、田舎から出てきた人間らしく都会に対して偏見を持たざるをえない。簡単に愛を吐くタイプの人間なら、残念ながら身近にいたので(都会に染まっていたけど中身はまるで変わっていない幼馴染とか自称素敵で無敵な胡散臭い情報屋兼自宅警備員とか。本人達からすればいっしょくたにするなと反論されると思うが)、最初は大いに動揺したが、今では慣れてしまった。
非日常も慣れれば日常なんだね、と帝人は遠い目をする。そんな沈黙というか、自分の考えに入り込んだ帝人を尻目に、池袋最強はでんと目の前に立ったまま動かない。おや、と帝人は思う。いつもなら、あっさり背中を向けるのに、今日はやけに粘るなと首を捻った。その間も静雄は帝人を見つめたままだ。というかガン見だ。ちょうこわい。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・あの、」
「何だ」
「まだ、何か御用でしょうか?」
「ああ」
沈黙。
(だから、何なんだ!)
心の中でちょっぴり口が悪くなった帝人である。
目の前の身体を押しのけて自分の部屋へと帰りたいが、帝人はお世辞にも良いとはいえないぐらい運動音痴で非力な女子である。池袋最強にとっては赤子同然だろう。
(くっそう、これだから男社会は・・・)と段々斜め上へと八つ当たりをし始めたのは、多分空腹のせいだろう。空腹は思考能力を低下させる。なので、帝人は静雄が発した次の台詞に思わず食いついてしまった。
「飯でも食わねえか。焼き肉でも奢る」
「いただきます」
即答だった。
帝人が我に返ったのは、目の前に出された久方ぶりのお肉を口にした瞬間だったことを追記しておこう。








(やってしまった・・・・)
思わずorzな格好をしたくなるほど帝人は凹んだ。
帝人は今公園に居た。外はすっかり日が暮れ、ネオンが街を照らしている。
空きっ腹にがっつり入れたお肉は沁み込んで帝人を満たしてくれたけれども、それ以上に頭が正常化した帝人を落ち込ませる。
(振っているひとに奢られるか普通・・・・)
周りを非常識だな何だの言っていたけど、自分も非常識の一員になってしまったと帝人は泣きたくなった。非日常は良いけど、非常識にはなりたくないのが帝人の持論だ。ちなみに静雄は煙草を買いに行っている。帰っちゃおうかなと片隅で思うが、奢らせた上にさっさと姿をくらませたらある意味食い逃げだよなと踏み止まる。そうして俯いていた帝人の視界に、「ほれ」とミルクティーの缶がどんと入り込んだ。
「ふえ、」
「ついでに買ってきた。やるよ」
そのままぽいっと投げられ、慌てて両手で受け取る。あ、ありがとうございますと帝人が言えば、別にと静雄は帝人が座っているベンチの横に佇んだまま煙草に火を点けた。その横顔はやはり帝人が知る限り何時もどおりだ。
そういえば、初めて会った時も、告白された時も、その後も、全部全部同じ顔だった。無表情とまではいかないけれど、仏頂面で傍目では少し機嫌が悪そうに見えるそんな顔。
(そうか、だからか)
だから僕はこの人の告白に最初だけ動揺して、後は別に揺り動かされないんだ。
帝人は一人納得する。
つまるところ、帝人は信じてないのだ。静雄の告白は遊びとはいかなくても、本気じゃないんだと。そう思っているのだ。
(このまま同じ応えを出していっても現状が変わらないなら、たまには違う応えを言ったほうがいいのかな)
NOとは違う、応え。
つまり、YES。
「いやいやいやそれはないでしょ」
「あ?」
「いえ、独り言です」
「・・・そうか」
そういえば静雄の受け答えも結構シンプルだよなぁと気付く。シンプルというか単語だ。セルティさんと前話してた時は、結構喋ってたのに。
(そこもなぁ・・・・)
考えれば考えるほど、本気ではないということに信憑性が高くなっていく。だんだん半目になっていく帝人に、静雄は気付く様子も無く煙草を吸い続けている。貰ったミルクティーをぐいっと飲めば、ほのかな甘さが舌を刺激し、胃へと流れていった。
(甘いのは疲れた脳みそに効くんだっけか)
帝人は空腹からは解放されたが、今度は疲れてきた。早くお家に帰りたい。ちらりと横目で静雄を見れば、動く気配が無い。もしかして自分の行動を待っているのかと思うと、ベンチに座り続けている自分が馬鹿らしく思えてきて、帝人は飲みほしたミルクティーの缶を片手に立ちあがった。すると、静雄の視線もこちらに向いた。
「帰るのか?」
「ええ、もう遅いですし。今日は本当に御馳走さまでした」
「送る」
「は?・・いえ、そこまでしていただかなくても」
「夜に女の一人歩きはあぶねぇ」