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夏祭り

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「嬉しい。ありがとう、キラ」
「…お礼を言うのはこっちだし」
普段は恥ずかしくて正面から言えないけれども、この時だけはアスランが抱きついてきてくれて良かったとキラは思った。何故なら、アスランに顔を見られる心配がないから。
キラは、そっとアスランの背中に腕を回した。

それからキラはカウントダウンをしていった。カレンダーには夏祭りの日、しっかりと赤いペンで花丸がついている。毎日カウントダウンするキラに、アスランはしょうがないといったようなことを言っていたが、内心ではキラと同じようにカウントダウンをして夏祭りを楽しみにしていた。

そして当日。キラは仕事があったが、午前中だけなので嬉しそうに家を出ていった。
一方のアスランは休日であったので、外で祭りの準備をする音を聴きながらキラの帰りを待った。
時々音のテストで流しているのだろう盆踊りのメロディが聞こえる度に、今日のことを思い描く。
しばらくして寝てしまっていたらしく、ゆらゆらと身体が揺れ、自分の名前を呼ぶ声が遠くできこえてぼんやりと目が覚めた。重い瞼をなんとか開けると、そこにはキラが居た。
「…帰ってたのか」
「今、帰ってきた。珍しいね、アスランが昼寝してるなんて」
「そうか?」
「うん。なんかアスランって寝てるイメージなくて」
「いつも一緒に寝てるだろ」
「それとこれとは違うよ」
「…そいえば、今何時なんだ?」
アスランが問うと、キラは壁に掛かっている時計を確認した。
「二時ちょっと前」
「…そんなに寝てたのか」
「やっぱり。昼食取った感じなかったから」
「キラは食べたのか?」
「ううん、まだ。折角だからそうめんでも茹でる?」
「…それも良いな」
「だったら、僕が準備するよ」
そう言うとキラはアスランの元を離れ、キッチンへと向かった。がさごそと準備した後リズム良い包丁の音が聞こえ、アスランはまた眠くなってきたがこのまま寝てしまったら、今度はキラの機嫌を損ねることが分かっていたのでソファから立ち上がり
軽くシャワーを浴びて目を覚ますことにした。
「…シャワー浴びてくる」
「それが良いよ」
くすくすと可笑しそうに返事をするキラの声を遠くで聞きながら、アスランは浴室へと向かった。
水と少しのお湯を加えたシャワーは、ぽかぽかとした身体には心地よかった。
しばらく浴びているうちに、段々と目が覚め、頭が覚醒してきたことが分かる。


「うわぁぁ、すごいね!アスラン」
キラのはしゃぎっぷりに、今年一緒に行けて良かったとアスランは心から思った。
去年一人で来た際、もちろんお祭りの雰囲気は楽しかったけれども、どこか物足りなさを感じていた。それは、キラが居ないからだったのだと一年経った今やっと気づけた。
ふと名前を呼ばれた気がして、知らぬ間に俯いてた顔を上げるとキラが此方に向かって手招きをしていた。
「何してるの。早く、アスラン!」
「はいはい」

キラは一通り屋台のものを食べたいらしく、すべてアスランとはんぶんこした。
アスランも流石に一人一個ずつ食べていたらすぐに満腹になってしまうと思っていたのでキラの提案に何も言わず了解した。
「ねえ、アスラーン」
「なんだ」
「あれ、取って」
キラが指指すのは射的であった。しかし、アスランは微妙な顔をしてキラを見た。
「お前、自分でやればいいだろ」
「なんで」
「オレより、お前の方が上手い」
「アスランやってよ。僕、今手が離せないし」
そう言ってにこりと、手に持っているわたあめを見せた。アスランは面倒臭いと思ったが今日はキラを目一杯甘やかそうと思っていた決意を思いだし、諦めるように溜息をつい。
「一回」
「はいよー」
キラは、アスランの半歩後ろから見ていた。ふと射的の文字を見つけ、アスランの構える姿が見たくなって突然お願いをした。
しかし、面倒臭いとか嫌だと言われ断られると思っていたし、実際アスランも言っていたが射的は得意であるので自分でやっても良いと思っていたのだ。
(まさか、やってくれるなんてなー)
がやがやと周りは明るい声や楽しそうな声が響いているのに、アスランの周りだけは違う世界のように感じた。キラは、その空気がとても好きだった。
すぐして、パンという音と何かに当たった音がした。
「にいちゃん、うまいなー」
「そんなことないですよ」
おじさんはアスランに景品を渡しながら楽しそうに声をかけた。
しかし、キラはおじさんの顔がどこか複雑そうなのを見て、少し可笑しかった。
キラが指差した場所は一番難しいところにあるもので、ある意味この射的の目玉商品でもある。
それを一発で取られてしまえば、複雑にもなるだろう。
「ほら、キラ」
「ありがとうー。さっすが、アスラン」
「………」

一通り見て回り、そろそろお祭りの雰囲気も終わりに近付きつつあるので帰ろうかという話になった。
キラは嬉しそうにアスランの二歩前を歩いている。その手には、焼きそばだったりフランクフルトの入った袋がぶら下がっている。
「キラ」
「なにー?」
声をかけられたキラは、立ち止まり振り向くとすぐそこにはアスランが居た。
「!」
そしてアスランと目線が同じになったと思ったら、キラの唇に何かが触れてすぐに離れていった。
「な…何、してるの」
「何ってキスだろ」
「…アスラン!」
名前を呼んで、アスランの顔を見れば、とても嬉しそうに笑っている。
そして、彼の瞳にうつった自分も同じように嬉しそうに笑っていた。
作品名:夏祭り 作家名:あか