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サイケデリック兄弟2~津軽と対面~

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目を開けると、木製の引き戸の前に俺は立っていた。周りを見渡すと、瓦葺の白い塀に、竹製の柵、松やら桜やらが植えられた石敷きの庭など、およそ俺の家とは全く様子が違っていた。呼び出すものが何もないので、その木製の引き戸を俺は叩いた。がしゃん、と思った以上に大きな音がして、驚いた俺はすぐに手を止め声をかけることにした。

「おい、誰かいないのか?」

すると家の内から推測二人以上の足音が聞こえた。それは次第に近づいてきて、やがて戸の奥で止まった。

「今出る」

なかなかに低い男の声がした。これが「津軽」の声か、と俺は認識した。

「サイケ、客が来たから出ないと」
「やだ!絶対やーだーッ!」

次いで聞こえてきた会話に、俺は銜えていた煙草を噛み潰してしまった。マスターの言うとおり本当にここにいた。明らかに津軽の邪魔をしている。このバカ兄が。

「出ちゃだめなの!」

噛み潰した煙草を携帯灰皿に押し込み、俺は家の主が戸を引く前に戸を引き開けた。

「え…」
「……」
「やっぱり~!」

上から俺と同じ顔をした奴(津軽)、俺、兄の順。俺は同じ顔をした金髪の和装の男を見た。なるほどこいつが。
 彼は兄に背後から抱きつかれた状態で俺の顔を見て驚いていた。

「俺と同じ顔?」

そして俺の格好を見て、ぽんと一つ手を打った。

「サイケの親戚ですか?」
「…まぁ、そんなところだ」

こんな奇抜な格好した奴はそうはいないだろう。そして俺は津軽の背後で小動物のように威嚇してくる兄を見やった。推測だが、全身で「なんできたんだよっ!おれ帰らないからね!」と言っているように見えた。

「イチャついてるところ悪いが、俺はマスターに連れ戻すように言われてきたんだ」
「臨也が?じゃあ、戻らないといけない」

そう言って津軽は兄の頭に手を置いた。

「やだ!」
「サイケ」

予想通り兄は従わず、津軽の後ろに身を隠した。試しに引っ張って連れて行こうとしたが、兄は津軽の羽織をひっつかんでいてどうにもならなかった。津軽ももう少し手伝ってくれればいいものを。きっと戻らないといけないなんて言いつつ本当は戻ってほしくないんじゃないだろうか。
 俺は兄の態度に呆れ半分に言った。

「…ッのバカ兄。人様に迷惑かけんじゃねーよ」
「あとでちゃんとやるもん!今は津軽が優先なの!」
「兄?」

津軽は首をかしげて繰り返した。

「うん、でりっくはおれの弟なんだ」

そう言って、兄は俺の腕をひょいと上に上げた。待てよこれじゃ俺馬鹿みたいじゃないか。

「弟……」

そう呟くと、津軽は若干眉を顰めた、ように見えた。そして俺の方に振り返り、じっと俺の顔を見た。

「な、何だ…言っとくが俺は」
「サイケはあげない」
「……は?」

突然言われた一言に俺はついていけなかった。「あげない」もなにも兄は物じゃないし別に欲しいとも思わない。ただ鬱陶しい位に面倒を見たがるお節介なやつというくらいの軽い考えしか持っていないのだが。

「わっ」

そして津軽はサイケを抱き上げて、奥へと行ってしまった。

「おい、待てよ!」

このまま返してもらえなくては俺が困る。俺も処理能力や容量他、スペックは兄並みに持ち合わせているが、兄ほどマスターのデータを持っているわけじゃない。マスターが兄を連れ戻すよう言ったのはそのデータに用事があるからだ。
 俺は靴を脱いで玄関を上がり、その後を追った。

「兄を返してくれ。じゃないとマスターが困る」
「臨也には俺が言うから」
「は……?」
「だから、」

そう言って津軽が俺の顔の前に手を近づけた途端、俺の視界はブラックアウトした。

 そして次に視界が開いたとき、俺は自分の家に戻っていた。

「……」

どうやら、強制ログアウトされたらしい。そう思うと、なんだか無性に腹が立ってきた。なんなんだアイツは。怒りの行き場がなく近くにあったソファを俺は蹴っ飛ばした。しかし空しい音が響くだけで何も解決しなかった。するはずないか。そこで、俺は靴を津軽の家に置いてきてしまったことに気付いた。あぁ、取に行かなきゃいけないな。嫌だな面倒くさい。
 すると、俺の蹴った音に反応したかのようにウィンドウが開いた。マスターだ。

『あれ?デリック帰ったんだ……サイケは?』
「追い出された」

素直に事実を述べると、マスターはどうしてか眉を顰めた。

『……まさか、津軽がそんなことするわけないじゃない』

彼はかなり穏やかな性格のはずだよ。

「本当だって」

俺は先ほど蹴っ飛ばしたソファにどかり、と座り腕はソファの背に回し足は組んだ。マスターは俺に疑いの目を向けてくるが、数分立って、やがて認めた。

『津軽に何か悪口でも言った?』

デスクに肘をついて、マスターはカップに口を付けた。

「言ってねぇ」

初めて会ったやつに悪口言うほど俺は不躾な奴じゃない。そもそもよく知らないのだから言える悪口自体がない。

『でも何か要因があるはずだよ』

そう言われ、首にかけたヘッドフォンを指で弄りながら俺は津軽のことを思い出す。別に俺を最初見たときは何もなかったな。ただ驚いてた。で、兄に対してはどうやら甘いと見た。それからマスターから言われたってことを伝えて帰るぞって兄に言って。 あぁ、そういえば。

「弟」
『は?弟?』

そうだ、あの時。

「津軽、サイケが俺のこと弟だって言ったとき表情が変わった」
『…………ッ』

その瞬間、マスターがデスクに突っ伏した。

「マスター?」

その反応が不思議で、思わす俺はウィンドウにまで走り手をついて声をかけた。

『いや、っはは…津軽も面白いなぁって』

なるほど、そこまで、へぇ。いろいろマスターはつぶやくがどれも自分だけで納得しているものばかりで俺には全く分からなかった。一体何が面白いんだ。

『たぶんすぐに来るよ』

ほら、後ろ。
マスターにそう言われ、首を後ろに向けたところ、兄と津軽が立っていた。兄はずいぶんと機嫌がよさそうだ。一方の津軽は、何というか、暗い。

「いざやくん、ただいま~」
『お帰り、サイケ』

兄はウィンドウに近づき、そして外の世界に出て行った。
 で、残されたのは俺と津軽。白い三人掛けのソファの端に座り、一人分の隙間が俺たちの今の状況をある意味示していた。

「………あー、と」

「………」

正直言う。かなりやりにくい。なんというか、全身から謝罪のこもった空気がこっちに流れてくる。そこまで気にされると逆にこっちが困る。
 すると、津軽が突然無言で俺の前に立ち、袖から靴を出した。そう、俺が置いていったやつ。

「あ、さんきゅ」

とりあえずそれを受け取って、履いた。上から呟きが降ってきた。

「…すみません」
「あ?」
「その、強制ログアウトして」
「あー、うん」

気にしていない、とまでは言えない。さっきまで腹が立っていたし、今もまだ納得していない。かといって気にするなとも言えない。とりあえず、これは聞いておくべきだろう。そう思って俺は言った。

「俺何かしたか?」

津軽は首を横に振った。なんだ、俺が何かしたわけじゃないんだな。

「じゃあ、何で?」