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サイケデリック兄弟2~津軽と対面~

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そう訊くと、津軽はばつの悪そうな顔をして、頬をかいた。

「…俺の浅はかな嫉妬だから」

嫉妬。何で津軽が嫉妬を感じたんだ。あの中で一体どこに嫉妬を感じる要素があったのか俺には皆目見当もつかない。まさか「俺が弟だと兄が言ったことなのか」。そう言ったところ、返事は肯定。親戚なのはいいけどそんな近しい関係だなんて云々と注意深く耳を傾ければ津軽のつぶやきが聞こえた。ここは詳しく聞いてもいいところなのか。いや聞きこむべきか。今後の津軽との距離を考える上での参考に。そう思ったが、津軽の方が話しかけてきたから止めた。

「デリックは、サイケの事好きですか?」
「……そこそこ」

鬱陶しいと思うことは多々ありすぎるが、嫌いではない。正直、「兄」というより「弟」のように感じることが多い。まだあまり行動範囲が広くない俺にとっては貴重な情報源でもある。ただ、急に背に腹に乗ってくるのだけは止めてほしい。

「じゃあ俺のことは?」
「…………」

突然何を仰るんでしょうかこの方は。はっきり言って好き嫌いを決めれるほどにまだ交流を持っていないじゃないか。俺より若干背が高いのはすこし気に食わなかったりするのだが、第一印象から今までの感想を言えばまぁ嫌いじゃない。そんな程度だ。
そういうと、俺は津軽に抱きしめられた。なんというか、すごく落ち着く匂いがした。

「よかった、嫌われていたらどうしようかと思った」

そんな程度で嫌いになるなんて俺は一体いくつの子供だ。そう抗議してやりたいと思ったがその気も匂いに削がれた。いったいこの落ち着く匂いは何なんだ。
しかしここで俺ははっとした。ちょっと待て、津軽は兄が好きで、兄が津軽を好いていることを俺は知った。それも結構な度合いでお互いに。例えるならあれだ。今この状況を兄が見てしまったらさてどうなることか。

「ただいま~って何!この状況?!」

なんてタイミングだ。今まさしく思い描いた嫌な状況が現実となってしまった。絶対兄は言うだろう。

「『でりっくに津軽はあげないよ!』」
「別にいらねぇよ!」

あまりに予想通り過ぎて思わず叫んでしまった。あげるあげないって、津軽はお前のものじゃないだろ。というかこんな台詞数分前にも言ったよな俺。言った。
 津軽は俺から離れ、何を言うと言わんばかりにサイケに微笑んだ。

「サイケの弟なら、俺の弟だろ」
「そ、それは…」

おい兄、なぜそこで顔を真っ赤にして俯く。
 この空気の中いたたまれなくなった俺は立ち上がり、現実世界用のコードを読み込み、飛んだ。俺って何ていいやつだ。そう自分に言い聞かせたところでこの居心地の悪さは全くこれっぽっちも一ミリも消えない。
 数秒後、俺はマスターの部屋に降り立った。突然の俺の登場にマスターは驚いたが、やがてすぐに視線を画面に戻した。

「しばらくここに居させてください」
「…どうしたの?」

画面から目を離さずに、マスターは俺に聞いた。

「……何か、精神的に疲れた」
「そう」

俺は階段を下り、来客用のソファの上に横になった。静かな空間に響くキーボードのタイプ音は今の俺にとってはどんな音楽よりも気分を落ち着かせてくれた。