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ドッペルゲンガー御断り。

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嘲笑が静雄の耳を打ち、無意識に腕に力が込められた。サングラスを隔てない双眸に浮かぶのは、紛れも無い殺意だ。
強まった腕の力が細い帝人の体に食い込む。痛みに顔を歪め、静雄に声を掛けようとした帝人の前に、誰かが静雄の後頭部を叩いた。
一瞬怒気が薄れ、呆気に取られた静雄は、ギッと目を眇めて相手を振り返る。
そこには、呆れ返った津軽が立っていた。

「餓鬼かってんだよ、テメェ等。自分より年下の子供に迷惑掛けてんじゃねぇ。見ろ、帝人が困ってるだろ。」

顎でしゃくられ、静雄は漸く帝人が酸欠に顔を真っ赤にしている事に気付く。
悪ぃ、と慌てて帝人を解放すれば、ヘニャリと情けない顔の帝人が平気だと手を振る。
津軽は再度帝人の頭に手を置くと、ゆるゆると撫でた。

「悪ぃなぁ、帝人。こんな不甲斐ない俺でよぉ。どうだ、この際俺にしてみるか?」

「っ、は!?」

重なった帝人と静雄の声は、後に続けられたサイケの声に、更に声量を上げる事になる。

「あっ、ズリィよなぁ、津軽。それじゃあ俺も、立候補させて貰うか。」

アソコのヘタレよりは満足させてやるぜ、と、目線で静雄を捉え、帝人の小さく白い手を恭しく取るとキスを落とした。
もう何が何やら頭が回らなくなってきている帝人は、もう1人居た筈の第3者に助けを求めようとして、その前に思い切り腕を引かれて唇に温かい何かが当たったので、敵わ無くなった、
深くなった口付が、余計に酸素と体力を奪って帝人の意思を削ぎ落とす。
腕に落ちた帝人の軽い体をしっかりと抱き締めて、静雄は射殺さんばかりの眼差しで自身と同じ顔を睨み付けた。

「上等だクソ野郎・・・帝人は俺のもんだ!誰にだって、ましてや自分になんて渡してたまるかってんだ!!」

火花散る修羅場。原因すら分からぬまま、意味も無い戦いの火ぶたは切って落とされたのだった。



「あのさぁ、ここ僕とセルティの愛の住処なんだけど・・・」

家主の当然の呟きは、白熱した論議を交わす静雄×3には全くといって良い程、届かなかった。



-END-