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フランケンシュタインの怪物

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冷たく硬直した兄の遺体を前にルートヴィヒは決意をした。
兄を蘇らせよう、と。
そのための資料も道具も、何もかも家には揃っていた。
ルートヴィヒは兄の身体に躊躇いも無くメスを入れた。既に死後硬直も解けた肉はやすやすとメスを受け入れ、ルートヴィヒの手は滑る様な手つきで兄の身体をバラバラにしていく。
昼も夜も無く、ただ黙々と作業を続けた。
痛んだ部位は墓場から掘り起こした新鮮な死体のものと取替え、継ぎ足す。全ての処方は資料に書いてあり、作業は滞りなく順調に進んだ。
最後に、継ぎ接ぎし、電極を差した心臓に強い衝撃を与える。
ルートヴィヒは疲労にか緊張にか、震える指で小さなスイッチを押した。いつの間にか訪れていた何度目かの夜の闇を、黄色い光が一瞬稲光のように強く瞬いて照らす。そして再び訪れた闇の中、かすかに空気が動いた。
ルートヴィヒはごくりと唾を飲んだ。
電球は焼き切れて意味を成さない。慌ててそこらを手探りし、ようやく見つけ出した燐寸で燭台に火をつける。
ぼんやりと浮かび上がった部屋の暗がりの中、兄は確かに目を開き、上体を起こしてそこにいた。
「兄さん…!」
歓喜の声と共に駆け寄るルートヴィヒを、兄は生前と変わらぬ深紅の瞳でじっと見つめて、言った。
「お前、誰だ?」