フランケンシュタインの怪物
ギルベルト・バイルシュミットは甲高い笑い声を上げた。
夕闇が支配する、そこは湿った柔らかな土の上。掘り起こされたばかりの墓の前だ。
「ルッツ、ルッツ、愛しいルッツ。お前をこんな暗く寂しいところに一人にするなんて出来ねえ、出来ねえよ…」
ギルベルトが、掘り起こされた死体にさも愛おしげに頬擦りする様子を、アーサー・カークランドは黙ってただ見つめた。
その行為がどれだけ不謹慎なものかは理解してはいるが、止める気にはなれなかった。何故なら、もし自分にもそれが許されるならば躊躇い無くしてしまう自信があるからだ。
しかしギルベルトは決してその冷たい躯、ルートヴィヒの死体を手放そうとはしなかった。
「アーサー、じゃあ頼むぜ。教えてくれよ。お前お得意の魔術ってやつを」
「…ああ」
アーサーは頷いた。頷いてしまった。今更後戻りは出来ないし、するつもりも無かった。アーサーも、ルートヴィヒを失いたくなかったのだ。
例え、他の誰かのものになるのだとしても。
作品名:フランケンシュタインの怪物 作家名:〇烏兔〇