二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

食卓の幽霊たち

INDEX|1ページ/7ページ|

次のページ
 
エレベーターのない四階建ての、古くも新しくもないマンションの三階にあいつの部屋はあった。今日こそは、という決意を持って、俺は埃のたまった階段をのぼる。何が「今日こそは」なのかと言われたら、実は自分でもよくわからない。でもここへ来るときには、ちょっとした気構えがいる。気構えというか、勢いのついたやけくその気持ちのようなものがいる。

殺人的に混みまくる金曜日の居酒屋のホールから上がって裏で休憩しているとき、メールが入った。「来るときに、小ねぎと豆腐を買ってこい」と、いうのだ。人が苦手なのを知っていて、性懲りもなくまた豆腐がラインナップに入ってる。眉をひそめた俺は、携帯を閉じて尻のポケットにねじ込む。

あいつの家の近所のスーパーは夜十時までの営業で、他にはぽつぽつ点在するコンビニしかない。途中でスーパーに寄ろうと思ったら、時間にあんまり余裕がなかった。おかげで俺は、せっかくちょっと可愛いなと思っているバイト仲間の子が休憩で裏へ来たのに、すぐ席を立たなきゃならなかった。

ねぎの突き出したスーパーの袋を片手にチャイムを鳴らすと、すぐにドアが開いた。
「適当に上がって座ってて」
声だけ残して引っ込んだ部屋の主に言われて家へあがった俺は、そのまま部屋の真ん中に据えられたミニテーブルの前に座る。落ちていたビーズクッションを引き寄せて、グレーのラグの上に足を伸ばす。あいも変わらず物の少ない部屋だった。本は隅のカラーボックスへ、服は作りつけのクロゼットへきっちり収まってて、間違ってもベッドの下からエロ本なんか出てこない部屋だ。
とりあえずつけたテレビのリモコンを片手に、何食わしてくれんの、と聞いたら、「まぁ、期待してろよ」そうのんびり返ってきた。それで俺は素直に期待することにする。一心に。ここに来ればどうしたって、仮にやめようと思ってても、期待はするのだった。
作品名:食卓の幽霊たち 作家名:haru