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【ヘタリア】兄さんが消えない理由 マリエンブルク城篇2-2

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次の朝、アントーニョにお礼を言って彼の家を後にする。
空港にはなぜかロマーノが車で送っていってくれた。

「じゃあな!ジャガイモ野郎!!」

「ありがとう。ロマーノ。」
「楽しかったぜ!お兄様!!今度ぜひおれんちにも来てくれよな!!」
「うるせ!それよりもな、このじゃがいも弟!!」
「なんだ?」
「俺んちの馬鹿弟、何度も連れて行くんじゃねえ!!むきむきがうつっちまうだろうっが!!」
「フェリシアーノは・・・・うちに勝手に来るんじゃ・・・。」
「うるせえ!!それじゃあな!」
「ありがとうなー!お兄様!!」
「俺はお前のお兄様じゃねえ!何度言ったらわかるんだ!このぼけが!!」


ロビーから帰っていくロマーノを見送る。
「さあ、そろそろ行くぞ。兄さん。」
「ああ・・・・。」

二人きりになると、とたんにギルベルトは寡黙になる・・・・・・。
「兄さん・・・・」
ルートヴィッヒが話そうとしたとたん、後ろからロマーノが叫んだ。

「けんかすんじゃねえぞ!このジャガイモ兄弟が!!」

そのけたたましい声にロビーにいたほとんどの人が振り返る。

ギルベルトもルートヴィッヒも赤くなってしまう。
ロマーノは走り去っていってしまった。

「い、行こうか。兄さん」
「あ、ああ。」

これだけ心配されているとかえって困ってしまう。
話しあいをしたいのだが、飛行機の中でも、さっきのロビーでの言葉を気にしてか、乗客が皆、ちらちらとこっちを見ている。

けんかをし始めるのでは、と乗客たちに見張られているような気分になる。

「兄さん、話があるんだ・・・。」
「わかってる。でもここじゃやめようぜ。どうせ、あの城行ったって、すぐに中には入れねーよ。心の準備がなんもねえからな。城の周りを案内してやるよ・・・。
その時に話そうぜ・・・。」
「ああ・・・わかった・・・・兄さん・・・・。」
「じゃあ、ポーランドまで寝てようぜ。どうせ、お前も昨日、寝てないんだろ?」
「兄さんだって・・・・・。」

昨夜はお互いの緊張感が伝わってきて、あまり眠れなかった。
結局、飛行機の中で、二人とも、すぐに寝てしまった。

周りの乗客たちはなにかほっとしている。

こんなにでかい男二人が暴れだしたら大変だ・・・・。
寝てくれてよかった。
きっと皆、そう思っていたに違いない。

ポーランドへ、翼は快調に飛び続けた。










****************************************

「リト。今度は何してるん?」

お化けはいないと納得してくれたフェリクスは、ようやく元気になった。
トーリスは、あの不可思議な十字架と旗の謎を解いてやろうと張り切っていた。


「電気のケーブルが短いから、あの地下の様子がよく見えないんだよ。だから、もっと長いのを付け替えたから、よく見えるよ。ポーが怖がってるようなものはないからね。」

「ほんとに?俺、まだお化けでるんじゃないかと思うしー。」

「すっごく明るくすれば、怖くないでしょ?あれね、十字架も旗も、たぶん何か仕掛けがあるんだよ。どっかであんな感じの仕掛け見たことあるような気がするんだけど・・。
すごい音は、たぶん空気の換気かなにかの音だし。」

「良かった・・・・・・・・。」

「ほっとした?じゃあ、内部の写真とか部屋を何に使ってたとか、展示に出せるように整理して行かなくちゃね。うるさいんだよ・・・・ユ00コ・・・・・。」

最後はつぶやきになる。
どうして、ポーランドの家の仕事を、自分がやっているのかと思うが、もういつものことだから仕方がない。
まあ、自分の家での登録を思い出してやればいいだろう・・・・・。

そんな二人のところへ、役人が走ってくる。
「ポーランドさん!!ええと、元プロイセンさん・・・じゃない、元ドイツ騎士団の方がいらっしゃるそうです。」
「プロイセンが?ああ、プロイセンでもないよね・・いまは・・・。」
「あいつ、ややこしいよな・・・しょっちゅう名前変わってさ。」

「協力してくれるなら、ありがたいよね。なんせ、ずっと住んでたんだから・・・。」
「けど・・・よく来てくれる気になったし・・・。」

珍しくフェリクスが神妙に言った。
「うん・・・・まあ、いろいろあったしね・・・。」
「あいつさ・・・・あれ以来・・・この城に来たことないって言ってし・・・・・。」
「そうか・・・・あれ以来・・・。どんな心境なのか・・・俺には想像もつかないけど・・・・。」
「来てくれるっていうんなら、歓迎するし!」
「ねえ、ポー。あのさあ・・・。」
「なにね?」
「今のドイツ騎士団は呼ばなかったの?元自分たちの城ってことでおんなじ団体としては呼んでほしいんだと思うんだけど・・・・。」

「今の騎士団はさ、あいつじゃないじゃん!!名前は一緒でも全然違う。」
「それはそうだけど・・・。」
「もとはあいつの「家」だったんだから、まず、あいつに確かめてもらってってのが筋かーなんて思うンよ!」
「ポー・・・・・・。」
「つらいかもしれんけどな、俺だって、いろいろ耐えたしー。
あいつ、今の騎士団とは仲良くなくてってのも聞いてるしー。」
「ああ・・・・・。本当に、「国」じゃなくなっても、いろいろあるね・・・・。彼は・・・・。」















その頃、ようやくたどり着いたマルボルク駅で、ギルベルトの足が止まった。



「兄さん?」
「・・・・・ヴェスト・・・・・すまねえ・・・・。ちょっと待ってくれ・・・。」

ギルベルトの呼吸が荒い。
握り締めたこぶしが震えている。

「兄さん・・・。ゆっくり・・・行こう・・・。」

「・・・・ああ。」

駅から大きく迂回して、川を回っていく城への道があったはずだ・・・。

昨日からずっと話したいこともある・・・・。


二人はしばらく黙りこくりながら、もくもくと歩いていく。
川沿いの道にでた。



突然、視界が開けて遠くにマルボルク、マリエンブルクの城が見えた。

ギルベルトの足が止まる。
息も止まっているのではないかと思うくらい、彼は動かない。


「兄さん・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・。俺は・・・・・・・。」



ギルベルトが大きく息を吸い込む。

なんとか自分を落ち着かせようと、何度も深く息をする。

それでも、心臓が早鐘のように音を立てる。



「ヴェスト・・・・・。」

「なんだ?兄さん」

「どうして・・・・俺がここに来たくなかったかわかるか?」

「・・・・・・・・・。」

「今まで・・・追い出されてからは・・一度も来たことがねえ・・・・・。」

「兄さん・・・・それは・・・。」

「俺はな・・・・ヴェスト・・・・・。ここに・・・・あの城に、住んでた・・・。」



一つ、一つ、絞り出すようにギルベルトは話す。

「戻れなかった・・・・んだ・・・・・。」

「・・・・・ああ・・・。」





ギルベルトが首を振る。





「俺は・・・・ここで何をしたか覚えてる。昨日のことみてえに覚えてる!」

「兄さん・・・・つらいのなら・・。」

「いや・・・聞いてくれ。ヴェスト。俺は言わなくちゃならねえんだ。」