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GUNSLINGER BOYⅧ

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君の涙



「お二人とも、もっとリラックスしてはいかがですか?」

部屋に満ちる険悪な雰囲気をまるきり無視して四木は言った。
四木に向かい合う形で立派なソファの端と端に座った臨也と静雄は互いに不機嫌そうに顔を背けている。


「・・なんでこの化け物がここにいるんですか?四木さん」
「それはこっちのセリフだノミ蟲」

ピリピリとした殺気が二人の間を走る。しかし二人とも一応座って動かずにいる。
数年前までこの街で戦争を繰り広げていた情報屋と喧嘩人形が同じ空間にいてじっとしているのは非常に珍しいことなのだが、実際のところ、今の状況では静雄が臨也を殺しにかかるのは無理なのだ。
なぜなら少しでも静雄が臨也に危害を加えようとすれば臨也の傍らに立っている少年がすぐさま静雄を殺しにかかる。そして先ほどの続きが始まってしまう。
静雄は臨也への殺意は薄れないものの、少年と戦いたくはないのでじっとしていた。
いくら普通ではないといっても見た目幼い子供を思い切り殴るなどできない。さっきはいきなり襲いかかられたのでとっさに応戦したが、こうして素顔を見てしまった後ではもう無理だ。
そういうわけで静雄はじっと耐え忍んでいるのだが、臨也も以前のように静雄を無意味にからかったりせずに黙っている。ただし目に暗い殺意がこもってはいるが。どうやらそうとう怒っているらしいことは傍目にも明らかだった。
四木はそんな二人の様子を興味深げに交互に見やると落ち着いた口調で言った。

「平和島さんは私が個人的に雇っているんですよ。ボディーガードや警護に、彼ほど頼りになる人物もいませんからね。
折原さんは社会福祉公社との共闘の件で来てもらっているんです。」
「へぇ・・こんなんがボディーガードね。旦那もお目が高い かっこ笑。」

思わず臨也の方を睨んだ静雄だったが、その向こうにいる少年の青い瞳と目が合って戦意を削がれた。
こちらを警戒しながらも、どこか宥めているようにも感じる表情。
静雄は浮きかけた腰を下ろした。

四木はそんな様子を見つつ、子供に向かって問いかけた。

「あなたの名前は?」

少年はちらりと臨也の表情をうかがう。
臨也は少年の方を見ようとしないが止めもしない。

「帝人、です」
「みかど君、ですか。折原さんがつけたのですか?」
「はい」
「帝国の帝に人、で帝人。」

帝人の返事の後に臨也が説明を加える。

「面白い名前ですね。」
「・・・・・・」
「帝人君も立ってないで座ってはいかがですか?私たちには折原さんに危害を加える動機もメリットもありませんよ。公社を敵に回すなんてこともしたくありませんし」
「・・旦那、よく抜け抜けとそんなこと言えますね。いきなり静ちゃんをけしかけておいて」
「てめぇ・・その呼び方はやめろって言ってんだろ」

臨也は取り繕った笑顔で皮肉っぽく言った。
そこに含まれた不快な呼称に静雄が青筋を浮かべる。

「平和島さんには何も説明せずにすみませんでしたね。
 それにしても、折原さんがそんなに気分を害すとはこちらも予想できませんでした。申し訳ない」

まったく申し訳なくなさそうな物言いに臨也が紅い切れ長の瞳を更に鋭くする。
常人ならば睨まれただけで怖気づきそうな目つきだ。

「・・当たり前でしょう。コレは一応俺の仕事道具なんです。他人に勝手に性能テストなんてされればキレますよ。壊れたらどうしてくれるんですか」
「そうですか。あなたは以前ならば誰がどんな目に遭おうとからから笑っているイメージだったのですが。そんなに大事だったとは、すみません。いくら義体でも平和島さんの相手をさせたのは酷でしたね」
「誰も大事だなんて言ってないし、大体そんな筋肉バカなんかに帝人君が負けるはずないでしょう?」
「壊れるかもしれないが負けるはずもない。勝手に試されればキレるが大事ではない。
言っていることが矛盾していますよ?あなたらしくもない」
「・・・・・っ」

臨也はギリッと唇を噛みしめ押し黙った。

静雄はあの臨也が口でやり込められていることに驚きつつも、先ほどからの臨也の発言に違和感を感じていた。

「・・仕事道具とか、性能だとか壊れるだとか、さっきから何なんですか。それにその子供は一体・・・」

明らかに人に使う表現ではない。
それに先ほど闘った時の動きも明らかに普通の人間の・・しかも子供の力と動きではなかった。

「平和島さんはこんな噂聞いたことありませんか?
 社会福祉公社は裏で政府の敵を秘密裏に消している。そして、重病や瀕死の子供の身体と頭を改造してその裏の仕事に利用している」
「は・・・・?」

確かに、前半は都市伝説みたいなもので小耳にはさんだことはある。
しかし、あくまでよくある噂だ。
だれも本気にはしていない。
それに・・子供?改造? なんだそれ。

「そのサイボーグ化された子供たちを義体と呼ぶらしいです。義体は担当の人間を護り命令通りにターゲットを始末する。殺人人形。
まぁ、私もその程度しか知りませんし実物を見るのは初めてですが」
「そんなこと、聞いたこともないし実際にあるわけ・・」
「情報操作されていますからね。一般人の耳に入ることはありませんが裏社会ではそれなりに有名なことですよ
大体、目の前にいるんですから信じないわけにいかないでしょう」

帝人と名乗った少年は相変わらず臨也の傍らに立ったまま黙っている。
華奢で小柄で、幼げなその容姿と殺しという二文字がどうしても結びつかない。
さっきの攻防も夢だったのではないかという気がしてくる。



「それはそうと、平和島さんは帝人君とお知り合いでしたか?」
「はぁっ・・・?」

その発言に、今度は黙っていた臨也がばっと顔を上げた。

「そんなはずないでしょう」
「いえ、顔を見たときの驚きようといい、態度といい、なんとなくそんな気がしたものでして。気のせいだったらすみませんが。平和島さん。」

静雄は額に手をやりながら言った。
そうだ、あの時の子供の表情を思い出すからこそ混乱しているんだ。

「・・実は数日前に」

臨也の顔がさぁっと青くなる。
なんだよ、なんだよそれ。俺は知らないよそんなの。

「そいつが不良に絡まれてて、助けたら道に迷ってるっていうんで大通りまで送ったんですよ」

四木に視線を送られた帝人もこくりと肯いた。

「なるほど、そういうことでしたか。
義体は例え相手がチンピラであろうと、任務以外では極力相手に力を奮わないよう調教されているらしいですからね。」

納得したように頷く四木とは反対に、臨也は無言で唇を噛みしめた。
じわりと口内に血の味が広がる。
言い知れぬ苛立ちと怒りだけが感情を支配していくのを感じた。

作品名:GUNSLINGER BOYⅧ 作家名:net