GUNSLINGER BOYⅧ
あの後こちらで調べた情報を渡し、正式に公社と粟楠会の協力を取り決めた臨也だったが、機嫌はすこぶる悪かった。
事務所を出た時に降っていた雨でさえいつもより煩わしく感じ、信号待ちで苛立ちが増す。
この世で一番会いたくない人間、いや、化け物と再会したことも、そいつに大事な帝人が作為的にけしかけられたことも、勝手に観察されたことも・・ああ、思い出すだけでむかつく。
しかし、そのけしかけた相手に向かって怒りを全面にだして感情的になれば、それこそ相手の思うツボだと知っている。ああして出来る限り冷静に振舞って感情を抑えて黙っているしかないのだ。本当、喰えないおやじだ。だから昔から苦手なんだあの人は。
それに、自分のあずかり知らぬ所で静雄と帝人が知り合いだなど・・そんなの、許せる筈がない。心当たりはある。帝人に隣町に資料を受け取りに行かせた時だ。本当は自分で行くべきだったが、自宅での情報処理に忙しかったし帝人ならば誰かに絡まれてもいざとなれば相手を昏倒させるぐらいは容易いので大丈夫だと思ったのだが・・まさかあの男と出会っているなど想像もしていなかった。
そしてそれだけのことにここまで苛立つ自分自身になにより焦燥感を覚える。
帝人が絡むと冷静な自分がどこかに行ってしまう。
誰がどんな目に遭ってもからから笑っている、そうだ、自分は本来そういう人間だ。
平気で嘘をついて自分を慕わせておいて手酷く裏切っても。それで恨まれても気にしない。
例え自分が刺されても死にそうな目に遭っても余裕綽々な態度で笑っていられる。
そうなるに至った人間の心の動きを面白がって観察して考察できる。そういう奴だ。
そうだったはずなのに・・変わってしまった。
大切なものができてしまったから。
こんな・・・こんな、自分よりもずっと早く逝ってしまうことが分かっている、人間ですらない人形なのに。
作品名:GUNSLINGER BOYⅧ 作家名:net