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可惜シ華

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燦然と豊臣軍に君臨した二つの星は、続けざまにその姿を消した。

 類い稀なる頭脳を以って豊臣軍を導いた軍師が病没し、
 それから時を経ずして徳川家康の反乱により、絶大な力を誇った覇王もまたその命を奪われた。
 

 はたしていつあの男は心を決めたのか。
 大谷には知りようもないことだ。それにしても上手く決起の根回しをしたものよと、大谷はいっそ感心すらしている。
 そして人が清い心を保ったままにどれだけむごい事を成し得るかを、大谷に知らしめたのは間違いなくあの男だ。いつ決意したにしろ、それは軍師が病没した後とは思えない。そう推測せざるを得ないほどに、好機を捉えた徳川の動きは素早かった。
 だが当の徳川は、軍師が息を引き取って後もなお、それまでと同じく三成の心へ寄り添おうとしていたのだ。
 すでに覚悟の上であり、眼に見えて取り乱すことはなかったとはいえ、三成は半兵衛の死にいたく傷ついていた。そこへ徳川はいつものように手を伸ばし、心の底から――そう、確かに本心からあの軍師を惜しみ、三成と番いの鳥のように慰め合っていた。そこに偽りはなかった。
 
 そうして片方の手では着々と刃を研いでいたのだ。
 

作品名:可惜シ華 作家名:karo