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マルナ・シアス
マルナ・シアス
novelistID. 17019
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【東方】東方遊神記13

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大本殿を出た神奈子たちは、早苗が待っているだろう里の入り口に向けて歩を進めた。「おぅ、もう結構日が傾いてきてるね。これは、外はもうかなり寒いんじゃないか?」
「ここはいいよね~寒くもならないし、暑くもならない。いつも快適な環境を保っているから」
「どういう仕組かはわかりませんが、それって一概に良い事といえるのでしょうか?」
天狗の里では、梅雨の時期に雨は降らず、夏の時期に台風など一度も訪れず、冬の時期でも雪など一切降らない。確かにそれは・・・何か違うかもしれない。
「うん。確かに、自然の息づかいを感じることはできないよね。まぁ一歩里から出れば、自然の塊だけど」
「元来天狗や河童なんかはそういうのを気にする種族じゃないからね」
などと話していると、向こうの方で早苗が手を振っているのが見えた。隣には椛らしき人物も見える。
「おっ?椛も待っていてくれたのかい?」
「そりゃあの娘の性格なら待ってるでしょ?」
「あの椛という娘、とてもできた娘のようですな」
青蛙神内の椛の評価も絶賛うなぎ上り中である。二人の下に近づくと、最初に話したのは早苗だった
「お帰りなさい。結構時間がかかってましたけど、お話はまとまりました?」
二柱の話が長いのはもうデフォルトだ。
「あぁ。ツアーのための書状の件と、青の紹介は滞りなく終わったんだけど、その後また無駄話をしちゃってね」
「ほんと、神奈子は話が長いからいやだよね~」
どの口が言うのか。
「どの口が言ってんだいまったく・・・」やっぱりそう思うよねぇ。
「あの話は決して無駄なんかじゃ・・・」
青蛙神が反論しようとするのを
「青」
と神奈子が目で止めた。仕方なく青蛙神は引き下がった。
「椛もよく残ってくれてたね。土産はちゃんと配れたかい?」
「はいっ!問題なく皆さんに行き渡りました」
そう言った椛を、少し複雑な顔でみつめている早苗に神奈子は気付いていたが、ここは流した。
「そうかい、よくやった。助かったよ、ありがとう」
「いえ、これくらい。お役にたてて嬉しいです」
本当に裏表を感じさせない気持ちの良い爽やかさである。本人の生い立ちなど微塵も感じさせない。
「可愛い事を言ってくれるじゃないか。それじゃあその嬉しいついでにもう一つ、頼みたいことがあるんだ」
「あっ、神奈子様、椛さんはこの後にとりさんと将棋を指す約束をしていますから、用事でしたら後日にしてあげた方が・・・」
やはり約束していたか。おそらく椛を誘ったが椛はまだ仕事があるから先に行って待っていてくれとでも言っているのだろう。
「いえ、大丈夫です。にとりには後で埋め合わせすればいい事ですし、将棋はいつでも指せますから」
にとりと椛は、椛が恩赦を受けて里に戻ってきて以来百年近い仲である。普通狗賓を含め天狗には敬語を使う河童だが、にとりは椛にだけはため口を使っている。これは二人の仲が種族や地位を超えている証である。
「いや、何も今すぐの用事ってわけじゃないんだ。実はあたしら、ちょっとした幻想郷巡りをしようと思っていてね。それで、各行き先に、訪問する旨を伝える手紙を送ろうと思っているんだけど、椛にその一通を届けてほしいんだ」
すぐには行ってもらう場所を言わなかった。
「はいっ!お安い御用です!それで、どちらにお届けすればいいんですか?」
予想通りの快諾っぷり。届け先の場所を聞いたら、いったいどんな顔をするだろうか。「椛に行ってもらいたい場所はね・・・地底の旧灼熱地獄跡地の上。地霊殿だよ」