二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

あなたがさいきょう

INDEX|3ページ/3ページ|

前のページ
 





「順当に考えれば、まあヤる前にヌく、ってのが一般的ではあると思うんだけどね」
「一応試してはみたんだけどな…」
「体力だけじゃなく精力も規格外かぁ…、うん、確かにそれじゃ帝人くんの負担が大変だ」
そうでなくとも、本来の目的とは異なる器官を使って無理な行為をしているのだ。普通に考えても受け手の負担が大きいというのに、帝人の体力の無さを差し引いても、相手が静雄ではたまったものではないだろう。
同情ではなく労わりの視線を込めて見ると、帝人がそっと眼を伏せた。頬がわずかに上気している様は色事に慣れない少年そのもので、静雄にしがみついているのも相俟って非常に微笑ましい。基本他人に興味の無い新羅だが、見守ってやりたいカップルではある。
「お泊りは週末でしょ? 来る日がわかってるんだから風俗を利用、…いやほら例えだからね? そういう手もあるって可能性をセルティ痛い痛い痛い!!」
「いえ、気を遣わなくて大丈夫ですよ、セルティさん。なんかもう、それもいいような気がしてきましたし…」
「…なんでお前がいるのに、わざわざ他の奴を抱かなきゃなんねぇんだよ!」
ゴツ、と音がして、目の前のローテーブルが真っ二つに折れる。帝人の投げ遣りな言葉に、静雄がテーブルに手を着いた結果だった。叩きつけた訳ではない、ただ手を置いただけだ。
静雄は短気だが、その怒りや力を直接帝人に向けた事は無い。が、今はそれを抑えきれない程腹を立てていた。あまつさえ恋人に「抱き合うのが辛いから風俗に行って来い」と言われて、怒らない男がいるだろうか。
「お前が嫌なら、無理に抱いたりなんかしねぇ。性欲を満たしたくて、お前を抱いてるわけじゃないからな。お前が相手だから歯止めがきかねぇんだよ…」
唸るように言えば、帝人がびくりと身体を揺らした。それでも、決して力に怯えているわけではないと示すように、その手は静雄の服をしっかりと握っている。
「…本当はちゃんとした女の子の方がいいんじゃないかって、その方が静雄さんの為なんじゃないかって思って」
「んなわけねぇだろ! お前が女でも男でも関係ねぇ、俺はお前が、帝人だから抱きてぇんだよ!」
「でも、その、…僕じゃ物足りないんでしょう…?」
「んなこたねぇ」
「だって、いつだって僕の方が先にばてちゃって! 静雄さん、この間自分でしてたじゃないですか!」
「み、見てたのか!?」
「あの、…気絶しちゃって、でもすぐに気がついたんで、その…」
「………」
「………」
「これっていわゆるリア充だよね、微妙ににピンクなこの空気をどうしたらいいのかな、ねぇセルティ?」
本人同士には到って深刻な問題らしいが、他人にとっては新羅でなくとも馬鹿馬鹿しい惚気だ。両想いで互いを気遣いあってて身体の相性もよくて、ならば結局どこまでいっても問題は本人同士の気持ちのみだと思うのだが、さてどう纏めた―――丸め込んだものか。
…と思案していると、それまで会話に混じろうとしなかったセルティが、ぽん、と手を打った。いそいそとPDAを叩き、帝人と静雄にそれを突き付ける。
『帝人は、静雄とするのは嫌じゃないんだよな?』
「う…、は、はい、それは…」
『静雄は、相手が帝人じゃないと嫌なんだよな?』
「当たり前だ」
『なら簡単だ。攻守を交代すればいいじゃないか!』
「……え?」
「へ?」
ぽかんと目を丸くする静雄、帝人に対し、即座に意味を理解した新羅は青ざめてセルティの腕を引いた。が、無邪気な妖精は自分の思い付きに、うきうきと文字を打ち続けている。
まさに妖精ならではのトンデモ発想、『池袋最驚』とはこのことだろうか。
『男同士はよくわからないが、受け手の方が負担が大きいんだろう? ならば静雄が受にまわれば、帝人の負担が減るじゃないか』
「落ち着いて静雄! セルティに悪気は無いんだよ、ほら、妖精だから人間界の世情には疎くて!」
『確かにそうだが、こういう場合は攻に主導権があると狩沢が言っていたぞ? だったら、帝人が攻めた方が、帝人のペースで進めらreeeeeeeeeeeeeee』
強引に画面を覆った新羅が、「中途半端な知識を披露しちゃダメ!」と蒼白な顔で怒鳴りつける。怒鳴る新羅を初めて見たセルティは驚きに目を瞠ったが、同じように目を丸くしていた帝人が、ぽん、と手を打った。
「セルティさん、目から鱗です…!」
「え? …帝人くん?」
「そうですよね、逆っていうのもありですよね。僕、自分が下じゃなきゃダメなんだと思い込んでました!」
『帝人…!』
嬉しそうに手を取り合う2人を、静雄はまだよくわからないといった顔でぽかんと眺めている。それはそうだろう、よもや自分が抱かれる側にまわる事など静雄の想像の範疇を超えるに決まっている。
本人同士だけではない、このカップルを見て静雄が下だと思う人はまずいない。少なくとも周りには絶対いないし、ましてや本人に向かって言うなんてあの狩沢だって絶対にしない。
「そもそも物理的に静雄さんのサイズは無理があるんですよね。僕はふつう、…だと思うんで負担も少なくてすみます」
『うん、そうだな』
「やり方ももうわかってますし。満足させられるかどうかは不安ですけど、試してみる価値はありますよね! ありがとうございます、セルティさん!」
「―――て言ってるけどいいの? 君、このままだと帝人くんに抱かれちゃうよ?」
「……………み、帝人が、…それでいいんなら…」
「ああああもう! 天然ボケに対するツッコミがこんなに難しいとは思わなかったよボケ3人に僕1人っていったいどうすりゃいいんだい!!」
ちらりと窺うと、視線に気付いた帝人がいつものように柔らかい笑顔を見せた。透き通るような、どこまでも邪気のないその笑みが現状を理解した上での表情なのだと思うと、背筋にそっと冷たいものが走る。
新羅の脳裏に『池袋最恐』という言葉が一瞬浮かんで、消えた。






作品名:あなたがさいきょう 作家名:坊。