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依存症

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今にも泣き出してしまいそうな顔を見て、愛してるなんて囁いてしまったのは、優しさでも同情でもなくただ俺が狡い男なだけだ。


「アーサー」
ベッドで甘い声で囁いたのに相手は明日の会議の資料に目を落として反応すらしない。
どうせ明日の会議だって議論が白熱して論点がずれてただの喧嘩になってしまうのは目に見えているはずなのに。
ベッドに入ってすることなんて資料を読むことじゃない。
愛を営むか暖めあって眠るかが正しいと思う。
会議モードから抜けきらないのはつまらない。
服の裾を少しめくって無防備な脇腹にキスをする。

「っわ、何すんだよ」
ビクッと敏感に反応した腰に腕を回して抱き寄せる。


「愛してる」
「眠いんなら先に寝ろよ、俺はまだ読み終わってないし」
「とか言ってもう3回は読んでるだろ」
「そんくらい読んでかねぇと意見が言いづらいだろ」
「そう?もう十分だって。お兄さんのこと少しは構ってよ、アーサー」
「言っとくけど会議期間中はしねぇからな」

アーサーがやっと資料から目を離しこちらを見る。
呆れた顔をしているが最中にねだるのはそっちだと思う。
行為が濃厚になるのは7対3くらいでアーサーのせいだ。
ベッドサイドのテーブルに資料を置きアーサーが隣に潜ってくる。
少し冷たいのはずっと資料と睨み合っていたからだろう。
手を伸ばして明かりを消す。
ベッドの端に寄ろうとする身体を引き寄せる。


「フラン」
「…はいはい。しないから安心してよ」

会議なんて嫌いだ。
心の中で呟く。
無意味だしつまらないし。
恋人は構ってくれやしない。
アーサーの頬に軽く口づけて、おやすみと囁く。
出来るだけ優しくて甘い声色で。

「…おやすみ」
素っ気ない返事。
それで十分嬉しいのだけど。




夜中にふと目を覚ます。
隣で寝息をたてている恋人は眉根を寄せて、少しうなされているようだ。


「アーサー」
呟いてみても起きる気配はない。
起こしてあげるべきなのか悩み、身体を動かそうとすると服が引かれる感覚。
アーサーの手がぎゅっと服を握り締めていた。
振りほどくことなど出来ず、眠る前にしたように頬に口づける。
きっと昔の夢でも見ているのだろう。
彼の大切な人の夢。
手を離されることにこんなにも怯えて。
依存してしまった自分に後悔して。
その手を掴んで優しい言葉をあげたのは狡い俺だ。
作品名:依存症 作家名:ツタガワ