ふざけんなぁ!! 2
学校側は彼女と平和島静雄が婚約状況だという事を、入学式の事件で把握していた。
だが、今までは静雄が怖くて手出しできなくて、彼女がこの先どうなろうと、『知らぬ存ぜぬ』を貫き通そうと、職員会議で決まっていたらしい。
でも、第三者の目に触れる【写真】という形で、二人の交際が世に出てしまった今、今後竜ヶ峰帝人が、もし静雄の暴力で死に瀕するようになった場合、知らんぷりを貫いたとしても、教育委員会やマスコミが黙ってはいない。
責任を追及されるのは嫌だ。
だから学校側は帝人に対し、親元に帰れと【自主退学】か【転校】を強制したのだ。
静雄が怖いから、自分達で帝人を守る事が不可能だと判断して。
大人七人相手の、二時間の攻防戦は、本当に辛かったが頑張った。
はっきり言って、学校側の危惧は大きなお世話だし、責任逃れも甚だしい卑怯な物言いだと思う。
でも「ご両親に連絡する」と、親をタテに取られれば帝人は弱い。
それでも帰りたくなかったから、頑張って抵抗して。
『今後、静雄に怪我を負わせられても、一切学校に責任を擦り付けたりしません。もし入院する事になったら、日付を遡って退学届けを提出します』と一筆書いて、漸く解放して貰えたのだ。
でも、こんな事を静雄に告げる訳にはいかない。
彼は凄く優しくて、それに臆病な人だから。
絶対傷つける。
もうこれ以上この人を、彼が忌み嫌っている怪力の事で、悲しませたくない。
「静雄さんは優しいから。静雄さんのせいじゃないのに、絶対自分が悪いって責めて苦しむから。どうしても言えなかったの。ごめんなさい」
うな垂れて、何度もぺこぺこと頭を下げ続けると、彼の大きな左手が、わしゃわしゃと彼女の髪を掻き撫でてきた。
「ちっ、幽絡みか。芸能人の家族ってだけで、ウロウロつきまといやがって。ブンヤの奴、コロスコロスコロスコロス……」
(……芸能人?……)
帝人がこくりと小首を傾げていると、いつもの調子を取り戻した静雄が、ぎらぎらした目で周囲を睨み付けた。
「ああ。もう、てめぇらに付き合ってる暇なんてな、俺の人生に置いて、一秒たりとも残ってねぇんだよ。命が惜しかったらとっとと消えろ。ごちゃごちゃうるせぇ真似しやがるんならさ、殺されたって文句は言えねぇよなぁぁぁぁ!!」
「ひあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
彼は再び左手一本で、進入禁止の丸い標識を引き抜き、ブンッと振り回した。
勢いを取り戻した彼は、無敵だった。
何という、非日常だろう?
彼女の目の前で、人が人形のように次々と吹っ飛んでいく。
弱りきっていた彼なら兎も角、池袋の魔人が復活した今、何人兵隊を集めたって、勝てっこない。
そんな敗戦ムードが蝕みだした黄巾賊は、例え三百人のコマを揃えていたって烏合の衆である。
だが、諦めと喰われる恐怖が浸透した集団の中に、一筋の救いの光が差し伸べられた。
「あー、お前らさ、もう散れ。後は俺が平和島静雄に話つけとくから、とっとと今すぐ消えろ。お疲れ~♪」
「将軍!!」
「将軍だぁ!!」
正臣が黄巾賊を抜けてから、まだ5ヶ月ぐらいしか経っていない。
いつもの人を小馬鹿にした、飄々とした物言いは、恐怖で震えていた少年達に安堵と冷静さをもたらしたようだ。
OBの影響力は絶大で、彼をいまだに慕う少年達から順々に、命令通りに池袋の雑踏の中へと消えていく。
「静雄ぉぉ、帝人ちゃぁぁん」
カラーギャングが戦意を喪失し、散り散りバラバラになっていく最中、ポケットに片手を突っ込んだトムが、ひらひらと右手を二人に振りながら歩み寄った。
★☆★☆★
すんません(ぺこぺこ)。書けてる所までです。
作品名:ふざけんなぁ!! 2 作家名:みかる