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Love is the answer

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八歳のとき父さんは言葉の刃で自殺した。

罵倒。痛罵。冷罵。悪罵。

広がる血だまりがヒタヒタヒタと足元を濡らし、そこに横たわる俺と同じ銀髪をそっと抱き起こす。
ぐにゃりと力の入っていない頭部は西瓜のように重かった。

その瞬間、俺のすべてが息を殺して停止した。





ぼんやりと昔の記憶が通り過ぎるのを待ち、寝起きでぼさぼさの頭を掻く。
二十年以上たった今でも昨日のことのように鮮明に蘇るあの日の出来事に、ゆっくりと息を吐き出す。
ふと、隣に温もりがあるのを感じ布団をめくると暗部時代からの後輩がグゥと鼻を鳴らして寝ている。
全裸で、だ。
「・・・・・」
いきなりすぎて事態が把握できない。
念のため後輩に布団をかけなおし自分の体にも目をおとす。
全裸、だ。
断言するが男と全裸で同じベッドで寝る趣味なんて俺にはないぞ。
焦りだす思考が慌てて昨夜のことを巻き戻す。
たしか酒は飲んだが飲まれるような飲み方はしていない、はず。

そうこうしてるうちに、隣の後輩が目を覚ました。
「ん・・カカシさん、おはようございます」
凝視する俺に眠たそうにしながらも丁寧に挨拶する。
「あ、ああ。おはよ・・ぅ?」
何故か疑問系になってしまった。
「えー、テン・・じゃなくてヤマト。なんで君、裸なの」
何か覚えてるのか恐る恐る問うが全裸という間抜けな共通点に、黒々としたまなこでぽかんと俺を見返している。
「あ〜あ。カカシさん、朝からそんな冗談言って」
あははと爽やかな笑顔と共に理解不能な言葉がヤマトの口から飛び出した。
「僕たちやっと一つになれたのに」
朝っぱらから何痛いことほざいてるんだ。
「・・・寝言は夢の中だけにしときなさいよ」
「えっ!?ほんとに覚えてないんですか?」
信じられないと俺の肩を掴みながら真顔で尋ねられる。
「この状況をよく見てくださいよ!!」
「見たくないから言ってんだよ」
よくわかんないなあ〜と小首を傾けると、そっと両手で顔を包みこまれた。
「思い出せないならコレで思い出して下さい」
キュと目を閉じてキスしてこようとするヤマトのおでこをペチンと叩くとなかなかイイ音が鳴った。
「なにするんですか」
「そっくりそのまま返すわ。その言葉」
ずずっと鼻を啜りとりあえず何か着るものをと、辺りを見回したその先には二人分の衣服が生々しく脱ぎ散らかっている。
おまけに見覚えのないゴムやらローションやらが視界に飛び込んできて、気分は一気に最悪の二文字だ。
軽い目眩を覚えつつ、俺は今必死に"昨日のことはやっぱり思い出すな"と自分に命令している。

只でさえショックなこの状態に更にトドメをさすように尻の間をヌルリと気色の悪い感触が走った。
「・・・っう」
思わず泣きそうな声が出る。
「どうかしましたか?」
呑気に尋ねるヤマトを制し後ろに手を伸ばす。
見ると指先に白濁した粘り気のある液体が絡み付いた。
にちゃにゃと指を使い音を出すとヤマトが赤面している。
「・・・カカシさん。それ止めてもらえますか。リ リアルすぎて、あの」
「現実を受け止めろっつたのは君だよね」
「ですがっ」
ヤマトの顔に刹那、緊張が走ったのを見逃すわけがない。
あ、そうか・・・これはひょっとして。
「なぁ、この嘘どこまでホント?」
「・・・・・え、嘘なんて僕ついて」
「俺の嗅覚なめてんの」
「・・・まるまる嘘です」

あっさり白状し床で土下座するヤマトに突き詰める気持ちも失せそうになる。
「だよな、昨日は一緒に飯食って軽く飲んでそのまま寝ただけだし・・・それにしても寝起きドッキリにしては悪趣味だよねえ〜」
まじまじとヤマトの頭頂を見つめながら言葉が滑らかに出てくる。
いじめてるわけじゃないが、コイツの心境としてはまさに穴があったら入りたいってとこだろうな。
「なーんでこんなことした?」
「カカシさんに」
「俺に?」
「・・・ずっと触りたくて」
その言葉を聞いた途端、ざわざわと心が浮き足立ったのを感じた。



暗部時代、仲間が次々死んでいく中で俺とコイツだけは常に生き残った。
死屍累々。
咽せかえる鉄の匂い。
他者に庇われ、死者に呪われ、生きている、共に。
依存が自然と定着し、ゆえに愛着も湧くってもんだ。
それはしかたがない、か。
静かにため息をつくとヤマトの肩が微かに揺れた。
改めて見ると全裸で土下座って、笑えばいいの?罵ればいいの?どっちだ。
「・・ま、とりあえず顔あげてよ」
怖々と頭をあげるヤマトはニコリと笑う俺を見て少しホッとしたように消え入りそうな声で「ありがとうございます」と言った。
後輩の手前、笑顔を繕ってはいるが、なんなの、このくすぐったい感情は。
男の裸なんて珍しくもなんてことないはずなのに、チラチラと動く目線をどこに固定していいのかわからない。
必死にヤマトを見まいとすればするほど不自然になってる気がする。
「あっすみません、今すぐ服着ます」
俺の無言に気を利かせ、ヤマトはそそくさと衣服をかき集め上着と下着を差し出す。
背中を向けながら着替えているが、若干前屈みだ。
・・・したいんだろうな。
寝ていた俺を全裸にする程の欲求不満っぷりだ、さぞ我慢の限界だったんだろう。
不憫な男の背中を見ながらむくむくと好奇心が膨れ上がる。
今ここで俺がその言葉を口にすれば先輩と後輩、上司と部下という関係はきっとあっけなく崩壊する。
深呼吸しヤマトの名を呼ぶと一拍置いてその言葉を声に出した。


朝の清々しい空気を切り裂き不思議と時間が止まったような気がした。


作品名:Love is the answer 作家名:ユラン