【東京マグニチュード8.0】目が醒めて、そこに有るのは
* * *
目を覚ましたら、崩れた街並みが動いていた。
そこは、荷台。怪我人を乗せるための車の。
東京の街は、そこかしこが壊れてしまっている。深い深い、地震の爪痕。
そう、これが現実。
「お姉ちゃん?」
顔を覗き込んでくる悠貴はもちろん小学生の男の子で。
帰ってきたんだ、と一瞬思いかけてかぶりを振る。
――帰るのは、これからだ。真理さんはもういない。あたしが悠貴を連れて帰るんだ。
「どうしたの? ぼーっとしてたよ?」
心配そうな顔をする弟を、安心させるように笑顔を浮かべる。
「大丈夫。これで家に帰れるんだと思ったら、ちょっと気が抜けちゃってさ」
「もうすぐうちに帰れるんだね、ぼくたち」
――そう、もうすぐだ。何も心配することなんて無い。
悠貴の笑顔がすぐ傍にある。このためにこの現実に戻ってきたんだ。後悔なんて、するもんか。
――悠貴が『−−−−−』なんて、あるわけないんだから。
・・・・・・?
変な音がした気がする。けれど、車の駆動音に紛れてよくわからなかった。
まあいいや、と気持ちを切り替える。
やっと家に帰れるのだと思うと、気分がよかった。
* * * * *
真夏の白昼夢の残滓は、いまだ少女を捕らえている。
それが消え去り、本当の現実が彼女の前に姿を現すまで、あと少し。
今の彼女は、まだ夢の中。
終わり
目を覚ましたら、崩れた街並みが動いていた。
そこは、荷台。怪我人を乗せるための車の。
東京の街は、そこかしこが壊れてしまっている。深い深い、地震の爪痕。
そう、これが現実。
「お姉ちゃん?」
顔を覗き込んでくる悠貴はもちろん小学生の男の子で。
帰ってきたんだ、と一瞬思いかけてかぶりを振る。
――帰るのは、これからだ。真理さんはもういない。あたしが悠貴を連れて帰るんだ。
「どうしたの? ぼーっとしてたよ?」
心配そうな顔をする弟を、安心させるように笑顔を浮かべる。
「大丈夫。これで家に帰れるんだと思ったら、ちょっと気が抜けちゃってさ」
「もうすぐうちに帰れるんだね、ぼくたち」
――そう、もうすぐだ。何も心配することなんて無い。
悠貴の笑顔がすぐ傍にある。このためにこの現実に戻ってきたんだ。後悔なんて、するもんか。
――悠貴が『−−−−−』なんて、あるわけないんだから。
・・・・・・?
変な音がした気がする。けれど、車の駆動音に紛れてよくわからなかった。
まあいいや、と気持ちを切り替える。
やっと家に帰れるのだと思うと、気分がよかった。
* * * * *
真夏の白昼夢の残滓は、いまだ少女を捕らえている。
それが消え去り、本当の現実が彼女の前に姿を現すまで、あと少し。
今の彼女は、まだ夢の中。
終わり