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家庭教師情報屋折原臨也6-1

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文化祭当日。

 ――― こんな形でここに来ることになるとはなぁ…

臨也は母校来良学園の校門の前にいた。様々な記憶がよみがえるが、色はなく完全に過ぎ去った過去であった。特に文化祭は思い出したくもない記憶がいくつか、修学旅行の次ぐらいに混ざっている。さらにあまり顔を見たくない恩師もまだ残っていると聞いた。正直溜息が出て踵を返して帰りたいと思うが、それを上回る目的があるので帰るわけにはいかない。外来用のチケットは妹から入手済みである。

「さーて、静雄君はどこにいるかな」

気を取り直し、臨也はコートのポケットに手を突っ込み校舎に入った。
 廊下はたくさんの人で賑わっていた。老若男女、制服から私服、明らかにコスプレともいえる格好まで、千差万別だった。もともと人の多い池袋に建つ学校とあって、客の動員数も半端ではない。
臨也は丁度目についた、教室の前で集客をしている女子生徒に話しかけた。

「すみません、ちょっといいですか?」
「何ですか?」

手にしていた看板を下ろし、女子生徒は臨也の方を見た。

「平和島静雄って子、何組か知ってる?」

名前を出すと、女子生徒は少し驚き、「えっと…」とつぶやいた。

「…確か二組だと思います。三年二組」
「そう、ありがとう」

平和島静雄という言葉にいささか驚いたようだったが、特に理由を聞くこともなく素直にその女子生徒は臨也に教室を教えた。三年二組と言えば、この校舎の二階の奥から四番目の教室のはずだ。臨也は過去を思い出しながら、間違っていないか門前でもらったパンフレットに目を通した。ついでに二組の催し物にも目を通せば、手書きの文字で「」と書いてあった。
 臨也は軽い足取りで階段を上った。三年の教室は二階に集中しており、すぐに行けるかと思ったら、そうはいかなくなってしまった。

「いっざにい~ッ!」
「…舞流」

突然階段上部から飛んできた女子生徒、もとい舞流を、臨也は身を捩って躱した。しかしそのまま無慈悲に見過ごすことはせず、腕を伸ばしてその小柄な体を受け止めた。ところが飛んできた言葉は感謝ではなく、文句。

「ちゃんと受け止めてよ!」
「蹴りをしようとした奴を誰が受け止めるか」

臨也は視線を上にあげた。

「九瑠璃も飛ぶなよ」
「…試……」

そう先にくぎを指せば、九瑠璃は大人しく階段を下ってきた。

「ねぇねぇ、私たちのクラスに来てよ。クイズショーを真似た出し物なんだけど、なかなか問題が面白いんだ!きっとイザ兄も楽しめるというか、絶対一番獲れちゃうよ」
「是…来…」
「ちょっと待った」

妹たちに両腕を取られそのまま連行されかけた。しかし目的を見失うことはなかったので、臨也はその拘束から逃れ、ひらりと階段の方に足を進めた。

「俺は他の教室に用事があるの」

絶対来てねと言う舞流の言葉を軽くあしらって、臨也は階を上がった。